「木へんに入る」と書いて「杁」(いり)と読む漢字は、地名で見かけることが多い国字(日本で作られた漢字)です。
意味はザックリ言うと、堤防や土手に作られた取水口・水門(樋門)のこと。愛知県周辺の地名(いりなか等)で“化石みたいに残っている字”としても知られています。
この記事では、「杁」の意味・読み方から、苗字や言葉、地名・用語まで辞典形式で整理します。
もくじ
木へんに入る「杁」の漢字の意味とは?
木へんに入る「杁」は、堤防や土手に設ける樋(とい)や樋門(ひもん)のある場所、いわゆる取水口・水門を表す漢字です。
簡単に言えば「水を入れたり出したりして量を調節するしくみ」で、用水を田畑へ引き込む目的のほか、地域によっては排水のための樋門まで含めて指す場合もあります。
読みは基本的に「いり」。見た目が「木+入」なので「木に入る?」と感じますが、意味は“木”そのものではなく、木製の樋・水利設備と結びついた言葉として覚えるとスムーズです。
木へんに入る「杁」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報
「杁」は部首が木(きへん)、総画数は6画です。日常で頻出する字ではないため、いわゆる常用漢字ではありません。
辞書では「国字」として扱われ、漢検では配当外(級の範囲外)とされることが多いのもポイントです。地名などに残る“地域文字”としての性格が強い漢字です。
基本データ
| 漢字 | 杁 |
|---|---|
| 部首 | 木(きへん) |
| 総画数 | 6画 |
| 分類 | 国字(日本で作られた漢字) |
| 常用漢字 | 常用外 |
| 漢検目安 | 配当外 |
| 文字コード | Unicode:U+6741/JIS:第2水準 |
木へんに入る「杁」の漢字読み方|音読み
「杁」は国字のため、基本的に音読み(中国由来の読み)はありません。辞典サイトでも、音読み欄が空欄だったり「—」になっていたりするケースが多いです。
見た目が「木+入」なので、機械的に「ニュウ」などを連想する人もいますが、これは正式な音読みとして一般化しているわけではありません。
結論として、読み方は「訓読み(いり)」で押さえるのがいちばん確実です。地名・苗字でも、この「いり」がベースになります。
木へんに入る「杁」の漢字読み方|訓読み
訓読みは基本の「いり」です。水を“入れる”しくみを指す言葉として定着しており、地名では「杁中(いりなか)」のように使われます。
また「圦樋(いりひ)」という語があり、「杁(圦)」が「いりひ」の略として説明されることもあります。資料によっては「杁(圦)の一字でいりひと読んだ例がある」ともされ、読みの揺れがあるのが面白い点です。
訓読みまとめ
- 基本:いり
- 文献・例外として触れられることがある:いりひ(「圦樋」の略として)
「杁」の成り立ち(字源)|木+入でなぜこの意味になる?
「杁」は、用水路の樋(とい)や樋門に関わる“いり”を表すために作られたとされる国字です。
ポイントは、樋が昔は木製だったこと。そこで意味のカテゴリとして木へんを取り、読み(訓)を連想させる要素として「入」を組み合わせた――という説明がされています。
同じ「いり」を表す字として、他地域では土へんの「圦」が使われた歴史もあり、「木へんの杁」「土へんの圦」は“水利の字”として並べて理解すると覚えやすいです。
木へんに入る「杁」が使われる苗字と読み方
「杁」を含む苗字は数は多くありませんが、実在します。読み方は基本的に「いり」を軸にして、「いりえ」「いりやま」などの形になりやすいです。
また、苗字は家ごとの読みが優先されるので、同じ表記でも読みが揺れる可能性があります。結論としては、名刺・住民票などのふりがな表記で確認するのが確実です。
「杁」を含む苗字例(読み方)
- 杁江(いりえ)
- 杁山(いりやま)
- 野杁(のいり)
- 二杁(にいり)
- 杁本(いりもと)
木へんに入る「杁」を使う熟語・言葉と読み方
「杁」は、日常でよく見る四字熟語などに入るタイプではなく、基本は水利に関する“言葉(用語)”として登場します。なのでこの章は「熟語を無理に探す」より、意味が伝わる単語として押さえるのがコツです。
特にセットで覚えたいのが、取水の入口を表す語や、元となる取水口を指す語です。読みはどれも「いり」が基本になります。
「杁」が関わる言葉(例)
- 杁(いり):堤防などに設けた樋門・水門の場所
- 圦樋(いりひ):樋門そのものを指す語(「杁/圦」が略として触れられることがある)
- 元杁(もといり):用水の“元”となる取水口(地名・施設名としても見かける)
木へんに入る「杁」を含む地名・用語と読み方
「杁」は地名で残りやすい漢字として有名で、特に愛知県に集中して見られるとされます。駅名でも「いりなか駅(杁中)」のように、漢字を避けてひらがな表記になった例がある一方、「二ツ杁駅」など漢字のまま残った例もあります。
地名の読みは「いり」がベースですが、地域や由来で表記が置き換えられることもあります。検索するときは、「杁/圦/入」など複数表記で当たると見つけやすいです。
地名・駅名の例(読み方)
- 杁中(いりなか)(地名・駅名として有名)
- 小杁(おいり)(地名例)
- 二ツ杁(ふたついり)(駅名など)
- 杁ヶ池(いりがいけ)(公園名・駅名などで見かける)
