「木へんに己」で書く「杞」は、熟語では「杞憂(きゆう)」で目にすることが多い漢字です。
読み方は基本「キ」「コ」。意味は「国の名(古代中国の杞)」のほか、植物名として「くこ(枸杞)」や「かわやなぎ」なども持っています。
この記事では「杞」の意味・読み方・成り立ち、苗字、熟語、地名・用語まで、漢字辞典スタイルでまとめます。
もくじ
木へんに己「杞」の漢字の意味とは?
「杞」の意味は大きく分けて「植物名」と「地名(国名)」の2系統があります。植物としては「くこ」(ゴジベリーで知られる枸杞)を指すほか、資料によっては「おうち」(樹木の名)や「かわやなぎ(こりやなぎ)」なども説明されます。
もう一つが、故事成語で有名な古代中国の国名「杞」。ここから「杞憂(きゆう)」=無用の心配、という意味が生まれました。文脈によって植物なのか国名なのかを見分けるのがポイントです。
意味の整理(代表)
- くこ(枸杞)
- おうち(樹木の名)
- かわやなぎ/こりやなぎ(ヤナギの一種)
- 中国・周代の国名(故事「杞憂」の杞)
木へんに己「杞」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報
「杞」は部首が木(きへん/木部)で、総画数は7画です。常用漢字ではなく、辞典では難読寄りの字として扱われますが、故事や植物名で出番があります。
学習目安としては漢検で1級相当とされることが多く、パソコン環境では比較的表示できる字です。データ処理をするならUnicode(U+675E)を控えておくと安心です。
基本データ
| 漢字 | 杞 |
|---|---|
| 部首 | 木(きへん) |
| 総画数 | 7画 |
| 常用漢字 | 常用外 |
| 漢検目安 | 1級 |
| Unicode | U+675E |
木へんに己「杞」の漢字読み方|音読み
音読みは「キ」と「コ」が基本です。熟語では「杞憂(きゆう)」のように「キ」で読むケースが代表的で、ニュースや文章でもわりと見かけます。
一方で「コ」は、語彙によっては表記説明として出ることがあります。迷った場合は、まず「キ」を第一候補にし、熟語側の定着読みで判断すると安全です。
音読み
- キ
- コ
木へんに己「杞」の漢字読み方|訓読み
訓読みは、植物名としての読みが中心で、代表は「くこ」・「おうち」・「かわやなぎ」です。「くこ」は熟語の「枸杞(くこ)」で見かけるのが定番。
「かわやなぎ(こりやなぎ)」系は、古典や工芸(後述の杞柳)の文脈で出ることがあります。訓読みは“植物の呼び名”として覚えると整理しやすいです。
訓読み
- くこ
- おうち
- かわやなぎ(こりやなぎ)
「杞」の成り立ち(字源)|木+己でなぜこの意味になる?
「杞」は、一般に形声文字として説明されます。左の木が「木・植物に関係する」ことを示し、右の己が音(おん)を表して、全体で「キ」系の読みにつながります。
この構造から、もともと樹木や植物名を表す字として使われ、そこから転じて国名(杞)にも用いられた、という理解がスムーズです。読みと意味が複数ある字なので、まず木へん=植物寄りを起点に考えると迷いにくいです。
木へんに己「杞」が使われる苗字と読み方
「杞」は単独の姓としてはかなり珍しく、実際には「杞を含む苗字」として出会うことが多いです。読みは「き」がベースになりやすく、地域や家ごとの読みが固定されます。
名簿・取引先で見かけたら、推測で読まずにふりがな確認が安心です(特に「きかわ/きがわ」のような揺れが出るパターンがあります)。
「杞」を含む苗字例
| 苗字 | 読み方(例) | メモ |
|---|---|---|
| 枸杞 | くこ | 植物名由来の表記としても有名 |
| 杞川 | きかわ/きがわ | 「川」の読みで揺れやすい |
| 杞山 | きやま | 比較的そのまま読める |
| 杞本 | きもと | 「本=もと」型 |
| 杞根 | きね | 難読寄りなので要確認 |
木へんに己「杞」を使う熟語・言葉と読み方
「杞」を含む熟語は、意味の入口が2つあります。ひとつは故事成語ルートで「杞憂(きゆう)」や「杞人憂天」など。もうひとつが植物ルートで「枸杞(くこ)」や、ヤナギに関する「杞柳」などです。
特に杞憂=無用の心配は現代でもよく使うので、「まずこれだけ覚える」でも実用度が高いです。
「杞」を含む熟語・言葉
| 熟語・言葉 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 杞憂 | きゆう | 無用の心配・取り越し苦労 |
| 杞人憂天 | きじんゆうてん | 起きないことを心配しすぎること |
| 枸杞 | くこ | ナス科の低木。実(クコの実)でも有名 |
| 杞梓 | きし | 良材のたとえ(有用な材・人材) |
| 杞柳 | きりゅう | コリヤナギ(しなやかなヤナギ) |
木へんに己「杞」を含む地名・用語と読み方
地名・用語として有名なのは、故事の舞台になった古代中国の国「杞(き)」です。この「杞」が「天が落ちるのでは」と心配した話につながり、杞憂の語源になりました。
また現代の地名では、中国・河南省に杞県(きけん)があり、「杞」の地名要素が残っています。日本語の用語側では、兵庫県豊岡周辺の伝統工芸「豊岡杞柳細工(とよおかきりゅうざいく)」が代表例で、原料の杞柳(コリヤナギ)がそのまま名前に入っています。
地名・用語の例
- 杞(き):古代中国の国名(故事成語の由来)
- 杞県(きけん):河南省にある県名
- 豊岡杞柳細工(とよおかきりゅうざいく):コリヤナギを用いた籠細工

