「木へんに万」で書く「杤」は、読み方が「とち」のレア漢字です。
意味は基本的にトチノキ(栃の木)を指し、現代では常用漢字の「栃」で書かれることが多い一方、地名や苗字では「杤」表記が残っているケースがあります。
この記事では「杤」の意味・読み方・成り立ち、苗字や熟語(言葉)、地名・用語まで、漢字辞典スタイルでまとめます。
もくじ
木へんに万「杤」の漢字の意味とは?
「杤」は、基本的に「とち」――つまりトチノキ科の樹木(トチノキ)を表す漢字です。
トチノキの実は灰汁(あく)抜きして食用にする地域もあり、食文化の文脈では「栃の実」や「栃餅」などの言葉でもおなじみです(表記は「栃」が一般的)。
また、県名の「栃木」の“とち”に関わる字としても語られ、地名では古く「杤」が使われていた例が多い、という説明もあります。
木へんに万「杤」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報
「杤」は部首が木(きへん)、画数は7画です。常用漢字ではなく、日常では「栃」に置き換えて書かれる場面が多い字です。
文字としてはJIS第2水準に入り、UnicodeはU+6764。また「杤」は国字として説明され、異体字として「栃」が挙げられる資料もあります。
基本情報(一覧)
| 漢字 | 杤 |
|---|---|
| 部首 | 木(きへん) |
| 画数 | 7画 |
| 常用漢字 | 常用外 |
| JIS水準 | JIS第2水準 |
| Unicode | U+6764 |
| 備考 | 国字と説明されることがある/異体字に栃 |
木へんに万「杤」の漢字読み方|音読み
「杤」は、いわゆる音読みが基本的にない(国字系)として扱われることが多い漢字です。
辞典の見せ方によっては、関連字(「櫔」など)とのつながりから参照的に音を示すケースもありますが、日常の読み分けとしては「音読みなし」と捉えて問題ありません。
迷ったときは、次の章の訓読み「とち」を軸に考えるのが一番安全です。
木へんに万「杤」の漢字読み方|訓読み
訓読みは「とち」が基本です。意味も読みもシンプルで、トチノキに直結します。
地名・苗字では「杤木(とちぎ/とちき 等)」のように複合語として現れ、単独で読むよりも“一部として読む”場面が多いのも特徴です。
読みとして覚えるなら、まずは「杤=とち」でOKです。
「杤」の成り立ち(字源)|木+万でなぜこの意味になる?
「杤」は形として木+万でできています。字源の説明としてよく紹介されるのが、「とち」の“と”=十、“ち”=千と見て、十×千=万になることから「万」を使い、そこに木へんを付けた――という説です。
栃木県の公式ページでも、近世の地名表記では「杤」が多く使われ、上のような成り立ちが“説”として紹介されています。
一方で、県名の表記が「栃」に統一されていった経緯や、なぜ「栃」を採用したかははっきりしないとも説明されており、ここは「定説」と断定せず、“有力な由来説”として押さえるのが安心です。
木へんに万「杤」が使われる苗字と読み方
「杤」は苗字でも使われます。単体の「杤(とち)」のほか、地名由来の複合姓として「杤原(とちはら)」「杤久保(とちくぼ)」「杤木(とちぎ/とちき/くちき)」などが見られます。
この字は異体字として「栃」に置き換わることもあるため、同じ家・同じ地域でも杤/栃の表記ゆれが起こりやすいのがポイントです。
名簿で見かけたら、読みはだいたい「とち」系ですが、最終的にはふりがな確認が確実です。
「杤」を含む苗字(例)
| 苗字 | 読み方(例) | メモ |
|---|---|---|
| 杤 | とち | 単体姓(珍しい) |
| 杤原 | とちはら | 異体字で「栃原」表記になることも |
| 杤久保 | とちくぼ | 地名・小字由来のパターン |
| 杤木 | とちぎ/とちき/くちき | 読みの分岐があるので要確認 |
| 杤本 | とちもと/とちぎ | 複数読みが載る資料がある |
| 杤山 | とちやま | 比較的素直な読み |
木へんに万「杤」を使う熟語・言葉と読み方
「杤」は、いわゆる漢語熟語(音読み熟語)が豊富なタイプではありません。使われ方としては、トチノキ由来の言葉や、地名・苗字由来の語の一部として出るケースが中心です。
代表的なのは「杤の木(とちのき)」「杤の実(とちのみ)」など。食品名として一般には「栃餅(とちもち)」表記が多いですが、資料や看板などで「杤」が使われることもあります(同字扱い・表記ゆれ)。
「杤=とち」と分かっていれば、言葉として出てきても読み間違いがぐっと減ります。
「杤」を使う言葉(例)
- 杤の木(とちのき):トチノキ
- 杤の実(とちのみ):トチノキの実
- 栃餅(とちもち):栃の実を使う餅(一般表記は「栃」)
- 杤木(とちぎ/とちき 等):地名・苗字で出る
木へんに万「杤」を含む地名・用語と読み方
「杤」は地名に残りやすい字です。栃木県の説明でも、近世の地名表記では「杤」が多く使われ、時代によって杤/栃/橡など表記が揺れていたことが紹介されています。
実例として、兵庫県には「杤原(とちはら)」という地名があり、同じ表記が複数地域で見られます。こうした地名は苗字(杤原さん等)にもつながりやすいのが特徴です。
県名の「栃木」は現在「栃」で固定されていますが、歴史資料や一部表記では「杤木」が登場することもあるため、読みは同じでも字が違う点に注意しましょう。
「杤」を含む地名・用語(例)
- 杤原(とちはら):兵庫県川辺郡猪名川町 など
- 安富町杤原(とちはら):兵庫県姫路市の町域名として見られる例
- 杤木(とちぎ):歴史的表記として出ることがある

