「木へんに午」と書く「杵」は、餅つきの道具としておなじみの「きね」を表す漢字です。
日常では「杵と臼(きねとうす)」「昔取った杵柄(むかしとったきねづか)」など、ことわざや言い回しで見かけることが多いですね。
この記事では、「杵」の意味・読み方(音読み/訓読み)・成り立ちから、苗字や熟語、地名での使われ方まで、漢字辞典ふうにまとめて解説します。
もくじ
木へんに午「杵」の漢字の意味とは?
「杵」は、臼(うす)の中の米やもち米をつき砕くための棒状の道具、つまり「きね」を表す漢字です。いわゆる餅つきの“あの棒”ですね。
辞書では「きね(穀物などをつく道具)」という説明が中心で、そこから転じて、布を打って音を出す「砧(きぬた)」の文脈で「杵」が出ることもあります(=“打つ棒”のイメージ)。
ポイントは、意味の芯がつねに「打つための木の道具」にあること。文章で見かけたら、まず「きね」を思い浮かべると理解が早いです。
木へんに午「杵」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報
「杵」は木偏(きへん)の漢字で、総画数は8画です。見た目はシンプルですが、学習漢字・常用漢字の枠ではなく、立ち位置としては人名用漢字に入るタイプです。
つまり、一般の文章で頻出する字ではない一方で、名前(名付け)には使える漢字として扱われます。読みの基本は訓読み「きね」で、熟語では音読みも出てきます。
「杵」の基本データ
| 漢字 | 杵 |
|---|---|
| 部首 | 木部(き・きへん) |
| 総画数 | 8画 |
| 常用漢字 | 常用漢字ではない(ただし人名用漢字として扱われる) |
| 音読み | ショ |
| 訓読み | きね |
| 漢検目安 | 準1級目安(資料により表記差あり) |
| 文字コード | Unicode:U+6775 |
木へんに午「杵」の漢字読み方|音読み
「杵」の音読みは「ショ」です。訓読みの「きね」に比べると、日常会話で単独で読む機会は少なめですが、四字熟語や漢語的な言い回しで登場します。
音読みが活躍する代表例が「杵臼(しょきゅう)」の形。これは「杵(ショ)+臼(キュウ)」で、米つき道具の組み合わせを漢語の読み方で言ったものです。
音読み「ショ」が出る言葉(例)
- 杵臼之交(しょきゅうのこう):身分や貧富にこだわらない交友
- 杵臼之交(しょきゅうのまじわり):上と同じ意味での別表現
- 万杵千砧(ばんしょせんちん):たくさんの砧の音・情景を表す語
読みで迷ったら、まず「ショ」=漢語・故事成語寄りと覚えておくと整理しやすいです。
木へんに午「杵」の漢字読み方|訓読み
「杵」の訓読みは「きね」です。餅つきのイメージどおり、臼の中の米やもち米をつく棒を指します。
単独で「杵(きね)」と書くほか、「杵柄(きねづか)」のように“杵の持ち手側(柄の部分)”を表す語もあります。ことわざ「昔取った杵柄」で見かけるのが定番ですね。
訓読み「きね」が活きる言葉(例)
- 杵(きね):臼で穀物や餅をつく道具
- 杵柄(きねづか):杵の柄の部分(持つところ)
- 杵と臼(きねとうす):餅つき道具の組み合わせ
現代日本語では、まず「杵=きね」が基本。熟語の場面だけ音読みを当てると読み分けがラクです。
「杵」の成り立ち(字源)|木+午でなぜこの意味になる?
「杵」は木+午の形でできています。木偏が付くことで、道具の素材が木製であること(=木に関係する字)を示しています。
ポイントは右側の「午」。資料によっては、「午」そのものがもともと杵(きね)の形を表した(または杵に関係する形だった)と説明され、そこに「木」を付けて“道具としての杵”を表すようにした、と整理されます。
つまり「杵」は、形としても意味としても“つく道具(きね)”が中心。字源の説明を難しく感じたら、「木の杵」をそのまま字にした、と捉えるとスッと入ります。
木へんに午「杵」が使われる苗字と読み方
「杵」一字の苗字はかなり珍しい部類ですが、「杵」を含む苗字はいくつか確認できます。読みは意味どおり「きね」系になることが多く、地域や家ごとの読み分けがある場合もあります。
また、苗字は同じ漢字でも読みが複数あるのが普通です。名簿や戸籍で見かけたら、ルビや公式の読みを最優先にするのが安全です。
「杵」を含む苗字の例(読み方)
| 表記 | 読み方(例) | メモ |
|---|---|---|
| 杵淵 | きねぶち/きねふち/きぶち | 読みが複数掲載される例 |
| 杵鞭 | きねむち | 「杵(きね)」の読みを含む |
苗字に関しては、データベースによって表記や人数推定に差が出ることもあるため、最終的には本人確認の読みがいちばん確実です。
木へんに午「杵」を使う熟語・言葉と読み方
「杵」を使う言葉は、日常語(訓読み)と、故事成語・四字熟語(音読み)で分かれます。日常語は「きね」、四字熟語側は「ショ」が目印です。
また、ことわざの「昔取った杵柄」は現代でも使われるので、「杵柄=きねづか」の読みは押さえておくと便利です。
「杵」を含む熟語・言葉(一覧)
| 言葉 | 読み方 | 意味(要点) |
|---|---|---|
| 杵臼(杵と臼) | きねとうす | 餅つき道具の組み合わせ |
| 杵柄 | きねづか | 杵の柄(持つところ) |
| 昔取った杵柄 | むかしとったきねづか | 昔身につけた技能は衰えにくい |
| 杵臼之交 | しょきゅうのこう | 身分にとらわれない交友 |
| 万杵千砧 | ばんしょせんちん | 砧の音があちこちから聞こえる情景 |
まずは「きね」を軸に覚え、必要なところだけ「ショ」の熟語を足すと、読み分けがラクになります。
木へんに午「杵」を含む地名・用語と読み方
「杵」は人名・一般語よりも、むしろ地名で目にすることがあります。代表例が大分県の杵築(きつき)や、佐賀県の杵島(きしま)です。
また「臼杵(うすき)」のように、道具名(臼+杵)がそのまま地名になった例もあります。こうした地名は読みが固定されているので、読み間違い防止のためにセットで覚えるのがおすすめです。
「杵」を含む地名・用語(読み方)
- 杵築市(きつきし):大分県の市名(「きづき」ではなく「きつき」と読むことで知られる)
- 杵島郡(きしまぐん):佐賀県の郡名
- 臼杵市(うすきし):大分県の市名(臼+杵の組み合わせ)
- 昔取った杵柄(むかしとったきねづか):昔の技能が今も役立つ、という意味のことわざ
地名の「杵」は、意味から読むよりも慣用の読みが大事です。迷ったら自治体名の読みを優先すると確実です。

