「木へんに予」と書く「杼(とち/ひ)」は、日常ではあまり見かけない“ちょい難しめ”の漢字です。
代表的な意味は「機織り(はたおり)で横糸を通す道具=杼(ひ)」。もう一つは「どんぐり/とち(木の実)」など、木の実を指す意味でも使われます。
常用漢字ではないため、文章では同じ意味の語をひらがな・カタカナで書いたり(例:シャトル)、別の字(例:梭)で表したりすることもあります。
もくじ
木へんに予「杼」の漢字の意味とは?
「杼」には大きく2つの意味があります。ひとつは織物の道具、もうひとつは木の実の呼び名です。
1つ目は「杼(ひ)」=機織りで、たて糸の間を通して横糸を入れる道具。英語でいう“shuttle(シャトル)”に近いイメージで、織機の中を行き来します。
2つ目は「どんぐり/とち(栃)/くぬぎ等の実」の意味。古い語感の「木の実」的な用法として辞書に載っています。
どちらの意味も「木へん」のとおり“木に関わる語”で、道具も木の実も、木と強い関係があるのがポイントです。
木へんに予「杼」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報
「杼」は部首が木(きへん)で、全体の画数は8画です。
常用漢字ではなく、学習漢字でもないため、一般の文章では見かけにくい表外漢字に分類されます(ただし辞書・古典・地名・人名で登場します)。
「杼」の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 漢字 | 杼 |
| 部首 | 木部(き・きへん) |
| 画数 | 8画 |
| 音読み | チョ/ジョ/ショ |
| 訓読み | ひ/とち/どんぐり(ほか) |
| 漢検の目安 | 1級 |
| 常用漢字 | 常用漢字ではない |
| 文字コード(Unicode) | U+677C |
「読めるけど書けない」になりやすい字なので、必要ならコピペで使うのも全然アリです。
木へんに予「杼」の漢字読み方|音読み
「杼」の音読みは主に「チョ」、「ジョ」、「ショ」です。
四字熟語・故事成語などでは音読みで登場しやすく、特に「チョ」は「投杼(とうちょ)」のように使われます。
音読みの一覧と、出やすい言葉
| 読み | 出やすい例 | メモ |
|---|---|---|
| チョ | 投杼(とうちょ)/曾母投杼(そうぼとうちょ) | 熟語・成語で見かけやすい |
| ジョ | 杼梭(じょさ)/杼機(じょき) | 機織り関連語で出ることがある |
| ショ | (辞書の読みに載ることがある) | 使用頻度は高くない |
「音読み=普段の会話で使う読み」ではなく、“漢語(熟語)寄りの読み”として押さえると覚えやすいです。
木へんに予「杼」の漢字読み方|訓読み
訓読みで代表的なのは「ひ」、「とち」、「どんぐり」です。
いちばん重要なのは「ひ」で、機織りの道具(シャトル)を指すときに使われます。手織りの用語集などでも「杼=ひ」と説明されることが多いです。
一方、地名や名字では「とち」の読みが出やすく、「荻杼町(おぎとちちょう)」のように読ませる例があります。
訓読みの目安
- ひ:機織りの道具(シャトル)
- とち:木の実・樹木名に関わる読みとして(地名・名字で出る)
- どんぐり:木の実の古い呼び方として
辞書によっては他の訓(例:動詞的な読み)を載せることもありますが、まずは「ひ/とち/どんぐり」を覚えれば実用上は十分です。
「杼」の成り立ち(字源)|木+予でなぜこの意味になる?
「杼」は形声文字(けいせいもじ)とされ、「木」+「予(音を表す部分)」で成り立つタイプです。
左側の「木」は意味のヒントで、木でできた道具・木に関係するものを表します。機織りの杼(ひ)も、昔は木製の道具でした。
右側の「予」は主に音(読み)を示す役割で、「ジョ/チョ」系の音につながると考えられます。
つまり、「木」=材質・カテゴリ、「予」=読みの手がかり、という組み合わせで、“木製の機織り道具”の意味に落ち着いたイメージです。
木へんに予「杼」が使われる苗字と読み方
「杼」を含む苗字はかなり少なく、見つけたら「とち」読みが多いのが特徴です。
特に「杼=とち」と読む例が多く、地名由来(栃の木・栃の実など)を想像しやすいタイプの名字です。
「杼」を含む名字の例
| 苗字 | 読み方 | ポイント |
|---|---|---|
| 田杼 | たとち/たどち | かなり珍しい読み分けがある |
| 杼原 | とちはら | 「杼=とち」読みの代表例 |
| 杼元 | とちもと | 分布は少数派 |
| 杼本 | とちもと | 同じく「とち」系 |
名簿や資料で見かけたら、まずは「とち」読みを疑うと当たりやすいです(ただし最終的には本人確認が確実)。
木へんに予「杼」を使う熟語・言葉と読み方
「杼」は単体でも「杼(ひ)」として使えますが、熟語では機織り関連や故事成語に登場しやすい漢字です。
意味がわかると、四字熟語のニュアンスもスッと入ってきます。特に「曾母投杼」は、現代のSNS時代にも刺さる話です。
「杼」を含む熟語・言葉
| 言葉 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 杼(杼・梭) | ひ | 機織りで横糸を通す道具(シャトル) |
| 機杼 | きちょ | 機織りの道具/転じて“工夫・新案”の意味も |
| 一家を機杼す | いっかをきちょす | 独自の表現・言論で一派を立てること |
| 曾母投杼 | そうぼとうちょ | 同じ噂を繰り返し聞くと信じてしまう、というたとえ |
| 杼機 | じょき | 機織りの道具・織機まわりを指す語として |
| 杼梭 | じょさ | 機織りに関する語(文脈で“織ること”全体を指す場合も) |
覚え方のコツは、「杼=織る道具」を基準にして、そこから比喩(工夫・噂)に広がると捉えることです。
木へんに予「杼」を含む地名・用語と読み方
「杼」は地名では「とち」読みが目立ちます。難読地名としても登場するので、読めたら強いです。
また、古典・歴史分野では人名(王族名など)に含まれる例もあり、現代の生活より資料・辞書・歴史系で出会いやすい漢字でもあります。
「杼」を含む地名
- 荻杼町(おぎとちちょう):島根県出雲市の地名
「杼」を含む用語・人名(歴史・古典)
- 意富富杼王(おおほどのおう):『古事記』などに見える王族名
- 土師富杼(はじの ほど):飛鳥時代の人物名として知られる
地名・人名は読みが固定されていることが多いので、見かけたらその固有の読み(例:おぎとちちょう)で覚えるのが近道です。

