「この苦しみを、貴様にも味わわせてやる!」——漫画やアニメでよく見るこのセリフ。「なんか『味わわせる』って変じゃない?『味あわせる』じゃないの?」と感じた経験はありませんか?実はこの疑問、プロの小説家でさえ悩むほど難しい問題です。
この記事では「味わわせる」と「味あわせる」のどちらが正しいかを、文法・辞書の見解・広まった経緯・言い換え方法まで含めて、わかりやすく解説します!読めば「あ、そういうことか!」とスッキリするはず!
もくじ
「味わわせる」と「味あわせる」——結論から言うと正しいのはどちら?
「味あわせる」と「味わわせる」の違いを分かりやすく言うと、「味あわせる」とは「味わわせる」の間違った使い方、「味わわせる」とは旨みや面白みを感じ取らせたり体験させることです。
| 表記 | 文法的な正誤 | 現実の使用状況 |
|---|---|---|
| 味わわせる | ✅ 文法的に正しい | 辞書・新聞・校正の現場で採用 |
| 味あわせる | ❌ 文法的には誤り | 一般的によく使われているが誤用 |
| 味わせる | △ 辞書に掲載例あり(三省堂) | 使う人は少数。どちらとも判断しにくい |
文法的・辞書的に正しいのは「味わわせる」です。「味あわせる」は広く使われていますが、明鏡国語辞典・毎日新聞用語集など主要な規範は「誤り」と明言しています。
なぜ「味わわせる」が正しいのか——「味わう」の活用形を文法で解説
「味わわせる」は動詞の「味わう」と助動詞の「せる」で成り立っています。「味わう」は変化する際、「味わいます」のように「味わ」+「ワ行」+「助動詞」というかたちになります。したがって、「味わ」の部分が「味あ」になっている「味あわせる」は文法的には誤りで、「味わわせる」が正しいと言えます。
もう少し具体的に見てみましょう。「味わう」はワ行五段活用の動詞です。
| 活用の種類 | 正しい形 | 誤った形 |
|---|---|---|
| 否定形(〜ない) | 味わわない | ❌ 味あわない |
| 使役形(〜させる) | 味わわせる | ❌ 味あわせる |
| 受身使役形(〜させられる) | 味わわされる | ❌ 味あわされる |
「味わわせる」が正解です。ワ行五段活用の動詞ですから否定の例の「味わわない」と同じです。
「祝う→祝わない→祝わせる」と同じパターンで、「味わう→味わわない→味わわせる」が正しい活用です。元の動詞「味わう」の「わ」を「あ」に変えることはできません。
なぜ「味あわせる」が広まった?——誤用が定着した3つの理由
文法的に誤りであるにもかかわらず、「味あわせる」がこれほど広まったのにはいくつかの理由があります。
理由①:「味わわせる」が言いにくい
「味わわせる」は非常に発音しにくい言葉であり「味あわせる」と聞こえてしまうこともあるため、勘違いして覚えていることが原因になります。 「わわせ」と同じ母音が続くため、口が回りにくく聴き取りにくいのです。
理由②:「合わせる」という別の言葉との混同
「味に合わせる」「口に合わせる」という表現に引きずられて、「味(あじ)+合わせる(あわせる)」=「味あわせる」と誤って分析してしまいやすいのです。
理由③:母音変換という言語現象
この現象は文法の変化ではなく、母音変換と呼ばれる事象で、論理やルールには関係なく、言いやすい・耳触りがよい母音の並びに変わっていく現象です。「味わわせる」の「わわ」という母音の重なりが自然に「あわ」に変化しやすいのは、日本語の音韻的な傾向によるものです。
辞書・専門家はどう判断している?——明鏡・毎日新聞・三省堂の見解を整理
複数の辞書や専門家の見解をまとめると、以下のようになります。
| 出典 | 見解 |
|---|---|
| 明鏡国語辞典(第2版) | 「味あう・味あわない・味あわされる」は誤り。「味わわせる」が正しいと明記 |
| 毎日新聞用語集 | 「味あわせる」と書かないよう案内。「味わわせる」の項目を立てて案内 |
| 三省堂国語辞典 | 「味わせる」を掲載(「味わわせる」の短縮形として) |
| 文化庁「言葉に関する問答集20」 | 未然形の場合も「味わわせて」が正しいという判断 |
| 新聞・通信社の用語集全般 | 「味わわせる」が正しいと案内 |
毎日新聞用語集も「あじわう」の項目で「『味あう』は誤り」とし、さらに「あじわわせる」の項目を立てて「味あわせる」と書かないように案内しています。他の新聞・通信社の用語集もみな同様です。基本的には「味あわせて」のような使い方は避けるべきだと言えます。
主要な国語辞典・新聞社の用語集はそろって「味わわせる」が正しく、「味あわせる」は誤りと明記しています。ビジネス文書・小説・論文では「味わわせる」を使うのが安全です。
「味わわせる」の使い方と例文——プラス・マイナス両方の場面で使える
「味わわせる」はプラスのイメージでもマイナスのイメージでも使うことができる言葉です。前後の言葉によってイメージが180度変わるので注意して使うようにしましょう。
プラスの場面(良い体験をさせる)
- 子どもたちに本物の音楽の感動を味わわせてあげたい。
- 珍しい食べ物を味わわせてもらった。
- 達成感を味わわせてくれるゲームデザインだ。
- この旅で息子に本物の自然の雄大さを味わわせることができた。
マイナスの場面(苦しみ・辛さを体験させる)
- 自分のような惨めな思いを誰かに味わわせたくない。
- あいつらにも私と同じ苦しみを味わわせてやりたい。
- 息子には学歴のことで劣等感を味わわせたくはない。
- 娘には同じ悲しみを味わわせたくない。
「〇〇を味わわせる」という形が基本パターンです。「〇〇」に体験・感情・感覚などを入れて使います。
どうしても「味わわせる」に違和感がある人のための言い換え方法
「味わわせる」を選ばなかった人が5%いたというのは事実です。この語形がしっくりこないならいかにすべきか。率直に言うと、解決法は見つかりません。どうしてもというなら「未然形を使わない」のがよいでしょうか。
具体的な言い換え方法を整理します。
| 元の表現 | 言い換え案 |
|---|---|
| 苦しみを味わわせる | 苦しみを体験させる/苦しみを経験させる |
| 感動を味わわせてあげる | 感動を感じてもらう/感動を体験してもらう |
| 達成感を味わわせる | 達成感を得させる/達成感を味わってもらう |
| 同じ思いを味わわせる | 同じ思いをさせる/同じ経験をさせる |
「体験させる」「経験させる」「感じてもらう」などの言い換えを使うと、「わわ」という発音の問題を回避しながら、同じ意味を伝えることができます。文章を書く際にどうしても違和感があるなら、こうした言い換えが最も実用的な解決策です。
「味わわせる」に関するよくある疑問——「味わわない」「味わわされる」も正しい?
Q. 「味わわない」も正しい?
A. 文法的には正しい形です。「味わう」の否定形は「味わわない」です。ただし、「味わわない」はあまり使わないかと思いましたが、「味わわないわけにはいかない」のような形はあり得るでしょうか。実際にはあまり使われず、「味わわない」と書く機会はほとんどありません。
Q. 「味わわされる」も正しい?
A. 明鏡国語辞典には「『味あわされる』とするのは誤り。正しくは『味わわされる』」と明記されています。文法的には「味わわされる」が正しい形ですが、こちらも非常に言いにくいため、「味わうことになる」「体験させられる」などへの言い換えが現実的です。
Q. 漫画やアニメで「味あわせる」と書かれているのはなぜ?
A. 多くの漫画・アニメの台詞は「耳で聞いたときの自然さ」を優先するため、文法的な正確さより「読みやすさ・口語っぽさ」が重視される傾向があります。また、作者や編集者が誤った形として認識していないケースもあります。漫画で見かけたからといって正しい日本語とは限らないため、公式文書や学校の作文では「味わわせる」を使いましょう。

