「いきがる」の漢字は「粋がる」と「意気がる」|意味と使い分けを解説

「いきがる」を漢字で書こうとして、「粋がる」と「意気がる」のどちらが正しいのか迷ったことはないでしょうか?

結論からいうと、辞書ではこの二つが併記されており、どちらも誤りではありません。ただし、それぞれの漢字が持つ意味には違いがあります。その違いを知っておくと、文章の中で意図に合った表記を選びやすくなります。この記事では、2つの漢字の成り立ちとニュアンス、使い分けの考え方、例文、そして若者言葉「イキる」との関係まで順に解説します!

いきがるを漢字で書くと「粋がる」「意気がる」の2通り

「いきがる」の漢字表記は、「粋がる」と「意気がる」の2種類です。国語辞典でも見出しが「意気がる・粋がる」のように並べて示されていて、どちらか一方だけが正解というわけではありません。

意味は、自分では粋(いき)だと思って得意になる、格好をつけて強がるといったものです。周囲から見るとそれほどでもないのに、本人だけが気取っている。そんな様子を、やや冷ややかに表す言葉だといえます。

動詞としては「いきがらない/いきがります/いきがる/いきがれば」と活用する五段活用です。「〜がる」は、「強がる」「偉がる」と同じく「そういう様子を見せる・そう振る舞う」という意味を添える接尾語です。つまり「いきがる」は、「いき(粋・意気)である様子を見せる」という組み立ての言葉だと捉えると理解しやすくなります。

「粋がる」の漢字に込められた「粋(いき)」の意味

「粋」は常用漢字で、音読みは「スイ」、訓読みは「いき」。

「粋(いき)」は、身なりや態度がさっぱりと垢抜けていて色気もあること、人情の機微をわきまえていることを表します。反対語は「野暮(やぼ)」です。「粋な計らい」「粋な着こなし」といった言い回しでおなじみでしょう。

この「粋」に「〜がる」がつくと、「粋であるように振る舞ってみせる」という意味になります。本当に洗練されている人を指すのではありません。洗練されているつもりで格好をつけている人に向けた表現です。この点に、言葉の皮肉な味わいがあります。

なお、辞書によれば「粋(いき)」という語そのものが、「意気」から転じた言葉とされています。後で触れる「意気がる」とは、もともと根っこが同じ言葉同士だということがわかります。

「意気がる」の漢字が示す意気込み・気概のニュアンス

もう一方の「意気」は、「意気込み」「意気揚々」「意気投合」などで使われる言葉です。心持ちや気概、張り切った気持ちを表します。

この漢字で「意気がる」と書くと、洗練さの演出というよりは、威勢のよさや強気な態度を見せつけるイメージが前に出やすくなります。肩で風を切って歩く、必要以上に強がる、といった場面にしっくりくる表記です。

とはいえ、先に見たとおり「粋」は「意気」から生まれた語です。そのため、二つの表記の意味がはっきり分かれているわけではありません。同じ言葉の、どの側面を強調するかという程度の違いと考えるのが実態に近いでしょう。「意気」という字面から受ける印象を、書き手が選んでいる、というくらいの感覚です。

「いきがる」の漢字はどちらを使うべき?使い分けの考え方

どちらも辞書に載っている表記なので、どちらを使っても間違いにはなりません。そのうえで、文脈に応じて次のように選ぶと、読み手に意図が伝わりやすくなります。

ひとつは、気取りや洒落っ気、見栄えへのこだわりを表したいときです。この場合は「粋がる」がなじみます。たとえば、ブランド品で身を固めて通ぶる様子などがこれにあたります。

もうひとつは、虚勢や強気、威勢のよさを表したいときです。こちらは「意気がる」が合います。不良っぽく振る舞う、目上の人に突っかかる、といった様子です。

また、「粋(いき)」は「すい」とも読める字です。そのため、「粋がる」を見て一瞬読みに迷う人もいるかもしれません。読みやすさを優先したい文章では、ひらがなで「いきがる」と書くのも十分に自然な選択です。一つの文章の中では、表記を統一しておくと読みやすくなります。

いきがるを漢字で書いた例文と自然な使い方

実際の文章では、次のように使います。

  • 新しい腕時計を見せびらかして粋がっていたが、値段を聞かれて口ごもった。
  • 入部したばかりの頃は先輩に意気がってばかりで、よく叱られたものだ。
  • 若い頃はいきがって無茶もしたけれど、今では笑い話だ。

3つ目のように、自分の過去を振り返って使うと、照れや自嘲のこもった柔らかい表現になります。反対に、目の前の相手に「いきがるな」とぶつけると、かなり強い非難として受け取られます。相手との関係や場面には気をつけたいところです。

「いきがる」は、基本的にほめ言葉ではありません。ビジネス文書や目上の人について書く文章では避け、「張り切る」「意欲的だ」などの中立的な言葉に言い換えるのが無難です。

いきがるの漢字と混同しやすい「熱る」「生きる」との違い

同じ「いき」の音を持つ言葉に、「熱る(いきる)」もあります。

これは「熱くなる、ほてる」「激しく怒る」といった意味の語です。「いきり立つ」の「いきり」もこの系統で、気持ちが高ぶって怒る様子を表します。「熱る」は「ほてる」とも読みます。現代では「いきる」と読む用法はあまり見かけません。

ネットでよく見る「イキる」は、こちらとは別物です。「いきがる」が縮まった形だと説明されることが多い言葉です。「イキる」を漢字にしようとして「熱る」を当てると、意味がずれてしまうので注意しましょう。

また、「生きる」とも音は同じですが、活用の種類が異なります。「生きる」は上一段活用なので「生きない」となります。一方、「イキる」は五段活用で「イキらない」となります。否定形にしてみると別の言葉だとすぐにわかります。

「いきがる」の漢字表記とネットスラング「イキる」の関係

「イキる」は、もともと関西を中心に使われていた言い方とされています。それがインターネットを通じて全国に広まりました。意味は「調子に乗る」「偉そうにする」「格好をつけて痛々しい」といったもので、「いきがる」よりもさらに相手を突き放す響きがあります。

このスラングは、カタカナで「イキる」と書かれるのが一般的です。「粋る」「意気る」といった漢字表記は辞書の見出しとしては定着していません。漢字で書きたい場合は、元の形である「粋がる」「意気がる」を使うほうが確実です。

「イキる」の元をたどると、江戸の美意識「粋」や、気概を表す「意気」にまでつながっています。かつての美意識を背負った言葉が、今は揶揄の言葉として使われている。表記に迷ったときは、そんな言葉の移り変わりも思い出してみてください。場面に合った書き方を選ぶ手がかりになるはずです。