「取り組み」「取組み」「取組」は、どれも見かける表記ですが、公用文・法令寄りの文章か、一般向けの読み物かで推奨が変わります。さらに、同じ語でも名詞か動詞かで送り仮名の扱いが変わるので、ここが混乱の原因になりがちです。
結論から言うと、公用文では名詞は「取組」、動詞は「取り組む」が基本です。一方、読みやすさ重視の文章や広報では「取り組み」で統一する例も多く、ここを混ぜると表記ゆれしがち。
契約書・規程のように「文書としての厳密さ」が優先される場面と、広報・記事のように「読み手の理解」が優先される場面では、同じ組織でも使い分けが起こります。この記事では、公用文の送り仮名ルールの根拠、契約書でどれが選ばれやすいか、場面別のおすすめ、表記を統一するコツまでまとめます。表記で迷ったときの判断順も紹介します!
もくじ
公用文の結論は名詞は「取組」動詞は「取り組む」
まず押さえたいのは品詞です。文章の中で「~に取り組む」と活用するなら動詞なので、「取り組む」と送り仮名を付けるのが基本になります。ここを「取組む」とすると、公用文の送り仮名の考え方から外れやすいので注意。
一方「○○への取組」「取組状況」「取組方針」のように名詞として使う場合、公用文の用例集では「取組」が採られています。名詞にすると活用がなくなるため、送り仮名を付けずに漢字だけで固定し、表記を安定させる考え方です。実際、用例集では「取組」と「取り組む」が並んで掲載されています。
名詞化すると送り仮名を省く発想
「取り組み」は「取り組むこと」をそのまま名詞にした形で、日常文では自然です。ただ、公用文では、用語を項目名として繰り返し使う場面が多いため、短く固定できる表記が好まれます。そこで名詞は「取組」に寄せ、見出しや箇条書きでも同じ形で運用しやすくしています。
つまり、公用文では名詞=取組/動詞=取り組むと役割で分けるのが的確です。なお「取組み」は間違いと断定できませんが、標準の用例としては採りにくく、部署や担当者でゆれが起きやすい表記なので、行政文書や社内規程など公用文寄りの文章では避けておくと無難です。
「取り組み」「取組み」「取組」意味の違いとニュアンス
意味としては、基本的にどれも「ある課題に向かって行動すること」を指します。差が出るのは見た目の硬さと読みやすさ、そして「どの基準に合わせた表記か」です。
「取り組み」はひらがなが入るぶん柔らかく、一般向けの説明文やブログで読みやすい表記です。「取組」は漢字が続くので硬めで、法令・公用文の文体と相性が良い一方、読者によっては少し固く見えます。「取組み」はその中間に見えますが、どこまで送り仮名を残すかの統一基準を作りにくいのが弱点です。たとえば「取組方針」「取組み方針」どちらにするか、派生語で迷いが増えがちです。
また、「取組」は相撲の「取組」のような慣用から広がった面もあり、行政文書では「施策の取組」「各省庁の取組」など、硬い語彙とセットで使われやすい傾向があります。読み手との距離感も含めて選ぶのがコツです。
場面別のおすすめ早見表
| 場面 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 通知・報告書・行政文書 | 取組 | 公用文の用例に寄せて表記を安定させる |
| 契約書・規程・約款 | 取組 | 法令風の文体と整合し、表記ゆれを抑えやすい |
| 広報・Web記事・社内向け説明 | 取り組み | 読みやすさを優先し、誤読リスクを減らす |
どれを選んでも大事なのは同一文書内で揺らさないこと。混在すると「チェックが甘い文書」に見えやすいので要注意です。特に「取組み」は、表記ゆれが起きやすいので要注意です。
公用文の送り仮名ルールの根拠は内閣告示と訓令
公用文の送り仮名は、国として示されている基準(内閣告示「送り仮名の付け方」など)を踏まえて運用されます。文化庁の整理でも、公用文は原則として基準に従い、必要に応じて許容(省略)も認めるという位置付けです。
ここでのポイントは2つあります。1つ目は活用する語は送り仮名を付けること。動詞・形容詞は語尾が変化するため、送り仮名で活用を示したほうが読み間違いが起きにくい、という考え方です。2つ目は、名詞として固定される複合語では、一定の条件下で送り仮名を省く運用が起きやすいことです。
たとえば公用文向けの資料には「取扱い」「取決め」など、送り仮名が固定された語が多数並びます。これは、表記を個人の感覚で変えないための仕組みとも言えます。こうした考え方に沿うと、「取り組む」は動詞なので「取り組む」。一方「取組」は名詞(複合語)として扱い、送り仮名を付けない形が採用されやすい、という流れになります。
結局、公用文で大切なのは一貫した基準で再現できることです。読み手よりも「文書運用」を優先する場面がある、というのが公用文の特徴だと捉えると理解がスムーズです。
「取り組み」「取組み」「取組」契約書ではどれか迷ったら「取組」
契約書や約款、社内規程は、文体が法令に近く、用語の統一が特に重視されます。そのため名詞は「取組」、動詞は「取り組む」と分けると整理がきれいです。公用文・法令関連の資料では「取組」が用語として挙げられており、根拠を説明しやすいのも利点です。
実務上のメリットは大きく3つ。1つ目は条文の見た目が揃うこと。条文では「実施」「遵守」「協議」など漢字語が並びやすく、「取り組み」だけひらがなが入るとトーンがズレることがあります。2つ目は定義語として扱いやすいことです。たとえば「本契約に基づく取組(以下『本取組』という)」のように、ラベル化がしやすくなります。3つ目は、見出しや項目名の横幅を取りにくい契約書では、文字数が短いほうがレイアウト上も安定します。
条文っぽい例文
- 乙は、情報セキュリティの強化に向けた取組を継続的に実施する。
- 甲乙は、前項の取組の状況を四半期ごとに報告する。
- 乙は、必要な教育訓練に取り組むものとする。
ただし契約相手が一般消費者の場合は、読みやすさの観点から「取り組み」に統一する選択もあります。ここは相手の読解負荷と、誤解が起きたときのリスクで決めるのが安全です。
広報や記事では「取り組み」が読みやすい!
同じ組織でも、通知・要綱のような公用文寄りの制度説明では「取組」を使い、広報誌やWebページでは「取り組み」で書く、という切替えが話題になることがあります。国語施策の議論でも「通知では『取組』だが広報誌では『取り組み』」のように、媒体で表記が揺れる悩みが言及されています。
読み手が行政文書に慣れていない場合、「取り組み」のほうが即読できるのは事実です。特にタイトル・見出し・SNS投稿などは、硬さよりも理解速度が大事なので、最初から「取り組み」で統一したほうが成果が出やすいこともあります。逆に、社内の稟議書や議会提出資料のように、厳密さが求められる媒体では、漢字表記に寄せて「取組」を選ぶほうが正式な文書として整います。
説明文に向く例文
- 私たちは環境負荷を減らすための取り組みを進めています。
- このページでは、現在行っている取り組みの内容をわかりやすく紹介します。
- 一人ひとりができることに取り組むことが、変化につながります。
要は、媒体の目的と読者層で最適解が変わるということ。公用文=絶対「取組」ではなく、目的に合わせて運用設計をする問題として捉えると決めやすいです。
表記ゆれを防ぐ社内ルールの作り方とチェックリスト
一番やりがちなのが「本文は取組、見出しは取り組み」など、無意識に混在させてしまうことです。まずは媒体ごとに基準を1つ決め、文書内では徹底して統一しましょう。迷ったら「名詞か動詞か」を確認すると、判断が一気に楽になります。
チェックリスト
- 名詞として使っているか(○○への取組/取組状況 など)
- 動詞として活用しているか(○○に取り組む)
- 文書の種類は法令寄りか、説明寄りか(契約書・規程/広報・記事)
- 同一文書内で「取組」「取り組み」が混在していないか
- 置換検索で「取組み」が紛れ込んでいないか
運用ルール例
・契約書・規程:名詞は取組、動詞は取り組むに統一。
・広報・Web:名詞は取り組み、動詞は取り組むに統一。
さらに「取組事項」「取組状況」のような派生語も、どちらの基準で作るかを先に決めておくと、後からブレません。文書テンプレートを用意するなら、WordやGoogleドキュメントで「取組/取り組み」を置換候補に登録したり、IMEのユーザー辞書に「とりくみ→取組(名詞用)」のように登録しておくと、初手の入力ミスが減ります。
最後は「正しさ」より再現性のある基準を作れるかが重要です。文章校正の段階では、検索置換の前に必ず周辺文脈を確認し、固有名詞や引用文まで一括で変えてしまわないよう注意してください。

