木へんに王「枉」の読み方・苗字や熟語【漢字辞典】

「枉(木へんに王)」は、日常ではあまり見かけない表外漢字のひとつです。読み方は「オウ」「まがる/まげる」などで、意味は「曲がる・ゆがむ」から転じて「道理をゆがめる」「無実の罪」といったニュアンスでも使われます。

この記事では、木へんに王「枉」の読み方・基本情報・成り立ち(字源)・熟語や用語例まで、辞典形式でわかりやすくまとめます。苗字や地名での使用例は少なめなので、見つけたときの読み解き方も一緒に確認しましょう。

木へんに王「枉」の漢字の意味とは?

「枉」は、まっすぐなものが曲がる(ゆがむ)ことを表す漢字です。木へんが付くので「木(木材・木の枝)」のイメージが強く、木がねじれたり反ったりする状態から意味が発展したと考えると覚えやすいです。

さらに比喩として、正しさ・道理がねじ曲がること(=歪曲する、正道から外れる)にも使われます。そこから「無実の罪を着せる」「無駄に・いたずらに」といった意味合いで用いられることもあります。

意味のポイント(覚え方)

  • 物理的に曲がる:木が反る、ゆがむ
  • 道理を曲げる:事実や法律を歪める
  • 無実の罪:ぬれぎぬ・冤罪の文脈で出る

木へんに王「枉」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報

「枉」の部首は木へん(木部)で、総画数は8画です。常用漢字ではないため、新聞や公的文書ではあまり登場せず、主に古典語・漢語・熟語の一部で見かけます。

学習難度の目安としては漢検1級相当とされ、いわゆる「上級の漢字」に分類されます。パソコンやスマホではUnicodeで扱えるので、デジタル入力自体は可能です。

漢字
部首木(きへん)
総画数8画
分類表外漢字(常用外)
漢検の目安1級
UnicodeU+6789
JISJIS第2水準

木へんに王「枉」の漢字読み方|音読み

音読みは「オウ」です。熟語(漢語)で使われるときは、基本的にこの読みになります。

たとえば「枉法(オウホウ)」「枉死(オウシ)」など、音読みのまま続く形が多いです。まずは音=オウを押さえると、熟語の読みが一気にラクになります。

音読みが出やすい熟語例

  • 枉法(オウホウ)
  • 枉死(オウシ)
  • 枉駕(オウガ)

木へんに王「枉」の漢字読み方|訓読み

訓読みは「まがる」「まげる」そして副詞的に使う「まげて」が基本です。意味の中心が「曲がる/曲げる」なので、読みもイメージ通りで覚えやすい部類です。

実際の文章では「事実を枉げる(=歪める)」「法を枉げる」のように、“道理を曲げる”ニュアンスで出ることが多いです。また「枉げてお願いする」のように、へりくだり・無理を承知で頼む場面でも使われます。

よく出る形(例文)

  • 事実を枉げるのは許されない。
  • 法律を枉げて解釈する。
  • 枉げてお願い申し上げます。

「枉」の成り立ち(字源)|木+王でなぜこの意味になる?

「枉」は、意味を示す「木」と、音を示す要素が組み合わさった形声文字と説明されることが多いです。ざっくり言うと、木へんが「木・木材」に関係することを示し、右側が読み(音)に関係します。

もともとの字形(古い形)では、右側は現在の「王」と完全に同一ではなく、音を表す別形が含まれていたとされます。そこから「木が曲がる→まっすぐでない→道理が曲がる」という連想で、“ゆがみ・不正”の意味が定着していきます。結果として、「曲げる」「歪曲する」「無実の罪」などの広い意味に発展しました。

成り立ちを一言で

  • 木(意味)音を表す部分=「曲がる/曲げる」系の意味へ
  • 物理的な“曲がり” → 比喩の“不正・歪曲”へ広がる

木へんに王「枉」が使われる苗字と読み方

結論から言うと、日本の苗字として「枉」一字や「枉」を含む苗字は、一般的な苗字データベースではかなり見つけにくい部類です。日常で出会う機会は少なく、「珍しい表記だな」と感じたら、まずは地名・中国語由来・当て字などの可能性も考えるとスムーズです。

一方で、中国語圏では「枉」が姓(名字)として扱われる例があるため、ルーツが海外にある場合は「姓」として現れることもあります。日本で見かけた場合も、相手の出自や戸籍上の表記により読みが決まるので、最終的にはご本人確認が確実です。

苗字として見かけたときの読みのヒント

  • まずは音読みの「オウ」を疑う
  • 中国語圏ルーツなら「ワン」系の可能性もある
  • 確実にするなら本人確認がベスト

木へんに王「枉」を使う熟語・言葉と読み方

「枉」を含む熟語は、法律・道徳・礼儀表現など、やや硬い文脈で出やすいのが特徴です。意味の核は「曲げる/歪める」なので、熟語でも「不正」「冤罪」「無理を通す」といった方向に寄ります。

ここでは、よく辞書に載る代表例を表にまとめました。まずは「枉法(オウホウ)」「冤枉(エンオウ)」を押さえると、出題や読解で役に立ちます。

熟語・言葉読み方意味(かんたん)
枉法おうほう法を曲げて不正に扱う
枉死おうし無実の罪などで不当に死ぬ
枉駕おうが(敬語)わざわざ来訪いただくこと
枉屈おうくつ道理を曲げて抑えつけられ屈する
冤枉えんおう冤罪・ぬれぎぬ
枉げる/枉げてまげる/まげて事実・道理を歪める/無理を承知でお願いする

木へんに王「枉」を含む地名・用語と読み方

日本の地名で「枉」そのものを含む例は多くありませんが、古典や神名、また漢語由来の用語としては登場します。地名で見かけないからといって“誤字”とは限らず、文献・固有名詞の世界ではきちんと用例がある点がポイントです。

代表例として、『日本書紀』に見える神名「八十枉津日神」は「やそまがつひのかみ」と読みます。また「矯枉過正(きょうおうかせい)/矯枉過直(きょうおうかちょく)」は、“是正が行きすぎる”という意味の四字熟語で、文章語としても見かけます。読み方は難しくても、意味は実用的なので覚えておくと便利です。

用語・固有名詞の例

  • 八十枉津日神(やそまがつひのかみ):禍(まが)に関わる神名
  • 矯枉過正(きょうおうかせい):正そうとしてやりすぎる
  • 矯枉過直(きょうおうかちょく):上とほぼ同義の四字熟語