木へんに土「杜」の読み方・苗字や熟語【漢字辞典】

木へんに土で「(きへんに つち)」は、見た目はシンプルでも、意味がいくつか分かれる漢字です。いちばん有名なのは「もり(神社の森)」ですが、実は「やまなし(木の名)」や、動詞の「ふさぐ/とじる」の意味でも使われます。

この記事では、木へんに土「」の読み方(音読み・訓読み)から、成り立ち、苗字、熟語、地名・用語まで、辞典のようにまとめます。

木へんに土「杜」の漢字の意味とは?

」の意味は大きく3つです。まず①は「やまなし」(山野に自生する木の名)。次に②は「ふさぐ/とじる」で、言葉を断ち切るようなニュアンスの「杜絶(とぜつ)」などに使われます。

そして③がよく知られる「もり」。特に神社を囲む森のような、神聖さを帯びた「杜(もり)」のイメージが強く、文章でも「鎮守の杜」のように使われます。

  • やまなし(木の名)
  • ふさぐ/とじる(例:杜絶)
  • もり(神社の森・鎮守の森)

木へんに土「杜」|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報

」は部首が木(きへん)で、総画数は7画です。常用漢字ではなく、国語施策上は人名用漢字として扱われます(名前に使える漢字)。

また「杜絶」は、同音の漢字による書きかえの考え方で、一般には「途絶」(とぜつ)と書かれることもあります。紙面や公的文書では、この表記ゆれが起きやすいのがポイントです。

基本情報

漢字
部首木部(き・きへん)
画数7画
常用漢字常用外(人名用漢字)
漢検の目安準1級
UnicodeU+675C

木へんに土「杜」の漢字読み方|音読み

」の音読みはが基本です。熟語では読みが固定されているものが多く、代表例を覚えると一気にラクになります。

たとえば、酒造りの職人を表す「杜氏(とうじ)」、不確かで誤りが多いことを表す「杜撰(ずさん)」で読む、という具合です。

音読み(代表)

  • (例:杜氏=とうじ、杜仲=とちゅう)
  • (例:杜撰=ずさん)

木へんに土「杜」の漢字読み方|訓読み

」の訓読みはもりやまなしふさぐとじるが挙げられます。中でも「もり」は、日本語として定着した読み(国訓)として説明されることがあり、独特のポジションです。

使い分けのコツは、名詞なら「杜(もり)」=神社の森、木の種類なら「杜(やまなし)」、動作なら「杜ぐ(ふさぐ)」「杜じる(とじる)」というイメージで整理することです。

訓読み(一覧)

  • もり(例:鎮守の杜、杜の都)
  • やまなし(木の名)
  • ふさぐ(例:杜ぐ)
  • とじる(例:杜じる)

「杜」の成り立ち(字源)|木+土でなぜこの意味になる?

」は形声文字で、左のが「木・樹木」に関する意味、右のが音(おと)の手がかり(ト)になる、という作りです。つまり「木+音」の組み合わせで、木に関係する語を表します。

もともとの意味は木の名(やまなし)に結びつけて説明されることが多く、そこから転じて、入り口をふさぐ/とじる、さらに(日本語として)神社を囲む森(もり)のイメージへ広がっていった、という理解がしやすいです。

木へんに土「杜」が使われる苗字と読み方

」は苗字としても実在し、読み方は主に「と」「もり」が代表的です。人数はデータベースによって差がありますが、概算では数百人規模とされ、かなり珍しい部類に入ります。

また「杜」を含む名字も少数ながらあり、読みは「もり〜」「と〜」系が多めです。苗字の読みは家ごとの慣用が優先なので、確定したい場合はふりがなや当人確認が確実です。

「杜」の苗字・「杜」を含む苗字(例)

表記読み方補足
もり推定数百人規模(データ差あり)
杜本もりもと「杜」を含む名字の例
杜山もりやま「杜」を含む名字の例
杜沢(杜澤)とざわ表記ゆれが出やすい

木へんに土「杜」を使う熟語・言葉と読み方

」は、意味(もり・ふさぐ)だけでなく、熟語で読みが決まっているものが多いのが特徴です。特に杜撰(ずさん)杜氏(とうじ)はよく見かけます。

「杜撰」は、故事的に「杜黙(ともく)」という詩人の名に由来すると説明されることがあり、「いい加減・不確か」の意味で定着しました。いっぽう「杜氏」は酒造りの現場で生きている言葉です。

「杜」を含む熟語(代表例)

熟語読み意味
杜撰ずさん不確かで誤りが多いこと
杜氏とうじ酒造りの職人・責任者
杜仲とちゅうトチュウ(植物名)
杜若かきつばた植物名(別読:とじゃく)
杜松ねずネズ(植物名)
杜絶とぜつ断ち切る(一般に「途絶」とも)
杜甫とほ中国・唐代の詩人

木へんに土「杜」を含む地名・用語と読み方

」は地名・施設名・キャッチコピーでも見かけます。代表的なのは仙台の異名として知られる「杜の都(もりのみやこ)」で、「杜=神社の森」のイメージがそのまま活きている例です。

ほかにも、自治体名の北杜市(ほくとし)や、駅名・地区名の公津の杜(こうづのもり)など、読み方が安定している固有名詞があります。固有名詞は原則として名称通りに書くのが基本なので、読みとセットで覚えると便利です。

「杜」を含む地名・用語(例)

  • 杜の都(もりのみやこ):仙台の呼び名
  • 北杜市(ほくとし):山梨県の市名
  • 公津の杜(こうづのもり):地名・駅名として知られる
  • 鎮守の杜(ちんじゅのもり):神社を囲む森を指す言い方