示へんに豊か「禮」の読み方・苗字や熟語【漢字辞典】

」という漢字は、示へんに「豊」と書く、画数の多い旧字体の漢字です。現代では「礼」という簡略化された字が一般的に使われていますが、「禮」はその本来の姿であり、より深い意味と歴史を内包した字形です。

「禮」は「礼儀・礼節・敬意を表す行為」を意味する漢字で、儒教の根本概念のひとつとして東アジアの文化・思想・社会規範に深く根ざしてきました。人と人との関係を円滑にする礼の精神は、現代社会においても変わらぬ価値を持っています。

本記事では、「禮」の基本情報から成り立ち、使われる苗字・熟語・地名まで、わかりやすく解説します。旧字体「禮」という漢字が持つ豊かな世界をぜひひもといてみてください。

示へんに豊か「禮」の意味とは?|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報

「禮」は、「礼儀」「礼節」「敬意を示す行為や作法」を意味する漢字で、現代常用漢字「礼」の旧字体にあたります。人が神や他者に対して敬意を示す行為全般を指し、儒教においては「仁・義・礼・智・信」の五常のひとつとして最も重視される徳目のひとつです。

「禮」の意味は単に「お辞儀をする」「挨拶をする」という行為にとどまらず、社会秩序を維持するための規範・制度・慣習全体を包含する広大な概念です。孔子は「克己復礼(こっきふくれい)=自分の欲望を抑えて礼に立ち返ること」を仁の実践として説いており、「礼」が人間社会の根幹をなす考え方であることがわかります。

基本情報をまとめると以下のとおりです。

項目内容
部首示(しめす・しめすへん)
総画数18画
常用漢字常用漢字外(新字体「礼」が常用漢字)
漢検目安準1級(旧字体として出題される)
人名用漢字人名用漢字に含まれる(名前に使用可)
新字体礼(れい)
UnicodeU+79AE

常用漢字としては新字体「礼」が使われますが、旧字体「禮」は人名用漢字として認められており、子どもの名前に使用することができます。画数が多く書くのは難しい字ですが、その分だけ格調と重みがあり、名前に深みを与える字として選ばれることがあります。

示へんに豊か「禮」の漢字読み方|音読み

「禮」の音読みは「レイ(れい)」「ライ(らい)」の二つです。「レイ」が漢音、「ライ」が呉音にあたります。現代日本語では「レイ」が一般的に使われており、「礼儀(れいぎ)」「礼拝(れいはい・らいはい)」などの熟語に見られます。

「ライ」という呉音は、仏教用語の「礼拝(らいはい)」や「南無礼(なむらい)」などの宗教的な文脈で用いられることがあります。同じ「禮(礼)」という字でも、「レイ」と「ライ」では使われる文脈が異なり、日常的な礼儀作法には「レイ」、宗教的・仏教的な場面には「ライ」が使われる傾向があります。

中国語(普通話)では「lǐ(リー)」と発音され、礼儀・礼節を意味する語として現代でも非常に広く使われています。儒教文化の影響を受けた東アジア各地で「礼」の概念は共有されており、その音読みもそれぞれの言語に根付いています

示へんに豊か「禮」の漢字読み方|訓読み

「禮」の訓読みは「みやびやか」「うやまう」などが挙げられますが、現代語での訓読みとしての使用は非常に限られています。日常的には音読みの「れい」で使われることがほとんどです。

古語では「ゐやゐやしい(いやいやしい)」「うやうやしい」という形で礼儀正しさ・恭しさを表す語と結びついており、「禮」の訓読みにはそうした敬意・恭順の意が込められています。「うやまう」という訓は「禮」の本質的な意味である「敬意を示す」という行為をそのまま言語化したものと言えます。

人名における「禮」の読み方の例を挙げると以下のとおりです。

  • れい(音読みそのまま・最も一般的)
  • らい(呉音読み)
  • のり(規範・礼法の意)
  • ひろし(礼が広く行き渡るの意)
  • ゆき(礼を行く・礼に向かうの意)
  • あや(礼の文様・美しさの意)

人名では「れい」という読みが最も多く使われており、女性の名前を中心に広く親しまれています。「禮」という旧字体を使うことで、同じ読みの「礼」よりも格調高く、伝統的な雰囲気を持つ名前になります。

示へんに豊か「禮」の成り立ち(字源)|示へん+豊でなぜこの意味になる?

「禮」は、部首である「示(しめすへん)」と「豊(ゆたか・ほう)」の組み合わせからなる会意兼形声文字です。それぞれの部品が意味と音の両方に関わっており、「禮」という字の成り立ちを理解することで、その意味の核心に触れることができます。

「示(しめすへん)」が意味を担う部分

「示」は、神への祭壇・神示・神聖なものを表す意符です。示へんを持つ漢字には「神」「祀」「祈」「福」「祭」など、神事・宗教・祭礼に関わる字が多く集まっています。「禮」において「示」が使われているのは、礼の起源が神への祭祀・供物という宗教的行為にあったことを示しています。もともと「禮」は神を祀る儀式を指す字であり、そこから人間同士の礼儀・礼節へと意味が広がっていきました。

「豊(豐)」が意味と音を担う部分

「豊(豐)」は、もともと神への供物を盛った器(豆・たかつき)に食物が豊かに盛られた様子を表す象形文字に由来します。神への豊かな供物という視覚的なイメージが「禮」の意味の核心を形成しており、「神に豊かな供物を捧げる儀式=禮」という成り立ちが読み取れます。また「豊」は「レイ・ライ」に近い音を提供する音符としての役割も持っており、形声文字としての側面も兼ねています。

つまり「禮」は「神への豊かな供物を示す=神を祀る儀式」という原義から出発し、やがて人と人との間で敬意を示すすべての行為・規範へと意味が拡張した字です。字の成り立ちを知ることで、「礼」が単なるマナーではなく、神聖な行為に由来する深い概念であることが伝わってきます

示へんに豊か「禮」が使われる苗字と読み方

「禮」(または新字体「礼」)を含む苗字は日本各地にいくつか見られます。旧字体「禮」を苗字に用いているケースは現代では少なくなっていますが、戸籍上の正式表記として旧字体を維持している家もあります。

「禮・礼」を含む主な苗字と読み方

苗字読み方
禮田(礼田)れいた・らいた・のりた
禮野(礼野)れいの・らいの
禮川(礼川)れいかわ・のりかわ
禮子(礼子)れいこ・のりこ(名前としての例)
禮一(礼一)れいいち・のりかず(名前としての例)

苗字としての「禮(礼)」を含む名字は多くはありませんが、人名(下の名前)としての「禮」は歴史上の人物から現代人まで幅広く使われてきた実績があります。明治・大正・昭和の時代には「禮子(れいこ)」「禮一(れいいち)」「禮二(れいじ)」などの名前が広く使われており、旧字体の「禮」が一般的に用いられていました。

現代では新字体「礼」が主流となっていますが、旧字体「禮」を名前に使うことで伝統・格式・礼節を大切にする家風や価値観を表現することができます。旧字体ならではの重厚な字形が、名前に特別な品格と歴史的深みを与えます。

示へんに豊か「禮」を使う熟語・言葉と読み方

「禮(礼)」を含む熟語は、礼儀・礼節・敬意・儀式など人間の社会的行為に関わるものが中心です。日常語から格式ある文語表現まで、非常に豊富な語彙が「礼」の字とともに使われています。

主な熟語一覧

熟語読み方意味
禮儀(礼儀)れいぎ人が社会生活を送る上で守るべき作法・マナーのこと。
禮節(礼節)れいせつ礼儀と節度。人としての品格ある振る舞いの総称。
禮拝(礼拝)れいはい・らいはい神仏・尊いものに敬意を示して拝むこと。
禮法(礼法)れいほう礼儀作法の規則・方式。武家礼法・小笠原礼法など流派もある。
失禮(失礼)しつれい礼儀を欠くこと。また、その場を離れる際の挨拶表現。
禮讃(礼讃)らいさん崇め讃えること。仏・菩薩への賛美。
克己復禮(克己復礼)こっきふくれい自己の欲望を抑えて礼に立ち返ること。論語の言葉。
禮遇(礼遇)れいぐう礼を尽くして人を厚くもてなすこと。

特に「礼儀(れいぎ)」は日常生活でも頻繁に使われる重要な熟語で、「礼儀正しい」「礼儀を守る」などの形で人の振る舞いを評価する際に広く用いられています。社会生活において礼儀を大切にする姿勢は、日本文化の根幹のひとつとも言えます。

また「克己復礼(こっきふくれい)」は論語に由来する四字熟語で、自分の利己的な欲求を抑えて社会的な礼節に立ち返ることを意味します。孔子の教えの核心を示すこの言葉は、現代においても自己鍛錬・人格形成の指針として引用される格調高い表現です。

示へんに豊か「禮」を含む地名・用語と読み方

「禮(礼)」を含む地名は日本国内では非常に少ないですが、歴史的な施設名・寺社名・文化的な固有名詞の中に「礼」の字を見つけることができます。また儒教・仏教・神道の文化と深く結びついた用語の中にも「禮」は生き続けています。

宗教・文化的な用語における「禮」

神道においては「礼」に関わる作法・用語が多く存在します。神社での参拝作法「二拝二拍手一拝(にはいにはくしゅいっぱい)」における「拝(はい)」は「禮」の行為そのものであり、神社参拝の一連の作法が「禮」の精神に基づいていることがわかります。また「礼金(れいきん)」「礼状(れいじょう)」「礼服(れいふく)」など、現代の日常語にも「礼」を含む言葉は数多く存在しています。

地名・施設名における「礼」の使用例

地名・施設名読み方所在地・概要
礼文島れぶんとう北海道最北端に位置する島。高山植物の宝庫として知られる。
礼幌れっぽろ北海道の地名。アイヌ語由来の地名に「礼」の字を当てたもの。
礼林寺れいりんじ各地に存在する寺院名。礼を林のように茂らせるという意から。

北海道の「礼文島(れぶんとう)」は「礼」の字を含む地名として全国的に知られており、アイヌ語の「レプン(沖の・沖にある)」に「礼文」の字を当てた地名です。高山植物が豊かに咲き誇る自然豊かな島として観光地にもなっており、「礼」の字が地名として広く親しまれている例のひとつです。

また儒教の五経のひとつ「禮記(らいき・れいき)」は、周代の礼制・礼法を記した古典であり、東アジアの礼の思想・文化の根幹をなす重要な文献です。日本の武家社会・宮廷文化・現代の礼儀作法に至るまで、「禮記」に記された礼の精神は脈々と受け継がれており、「禮」という字が持つ文化的・思想的な重みを今に伝え続けています。