「拘」という漢字は、手へんに「句」と書く、比較的なじみのある漢字です。「拘束」「拘置」など法律や社会的な文脈でよく目にする字であり、日常生活の中でも意外と登場する機会が多い一字です。
「拘」は「とらえる・拘束する・こだわる」を意味する漢字で、物理的に人や物をつかまえて動けなくする行為から、精神的に何かにとらわれてこだわるという抽象的な意味まで、幅広いニュアンスを持っています。法律用語から日常表現まで、現代語においても活躍の場が多い字です。
本記事では、「拘」の基本情報から成り立ち、使われる苗字・熟語・地名まで、わかりやすく解説します。「拘」という漢字が持つ多彩な意味の世界をぜひひもといてみてください。
もくじ
手へんに句「拘」の意味とは?|部首・画数・常用漢字(漢検目安)など基本情報
拘
「拘」は、「とらえる・束縛する・こだわる・かかわる」を意味する漢字です。物理的な意味では、人を捕らえて自由を奪う・拘束するという行為を指します。そこから転じて、精神的・心理的な意味での「こだわり・執着・とらわれ」を表す用法も広く定着しています。
「拘」を使った「拘束(こうそく)」「拘置(こうち)」「拘留(こうりゅう)」などは法律・刑事司法の分野で頻繁に使われる専門用語であり、「権力・制度によって人の自由を制限する」という法的概念と深く結びついています。一方で「拘泥(こうでい)」「拘らず(かかわらず)」など、日常的な表現にも「拘」は広く用いられています。
基本情報をまとめると以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 部首 | 手・扌(て・てへん) |
| 総画数 | 8画 |
| 常用漢字 | 常用漢字(常用漢字表に含まれる) |
| 漢検目安 | 3級 |
| 人名用漢字 | 人名への使用は一般的ではない |
| Unicode | U+62D8 |
「拘」は常用漢字として認定されており、教育漢字としても学習される標準的な漢字です。法律・行政・日常語など幅広い文脈で使われるため、現代日本語において実用的な重要度の高い字と言えます。人名への使用は一般的ではなく、主に熟語・動詞・法律用語の中で活躍する字です。
手へんに句「拘」の漢字読み方|音読み
「拘」の音読みは「コウ(こう)」「ク(く)」の二つです。「コウ」が漢音、「ク」が呉音にあたります。中国語(普通話)では「jū(ジュ)」と発音され、拘束・拘禁を意味する語として現代でも広く使われています。
日本語では「コウ」という音読みが圧倒的に一般的で、「拘束(こうそく)」「拘置(こうち)」「拘留(こうりゅう)」「拘禁(こうきん)」など、法律・司法に関わる重要な熟語の多くに「コウ」の読みが使われています。「ク」という呉音は「拘泥(こうでい)」などでは「コウ」が使われるため、現代語では「ク」単独での使用例はほとんど見られません。
「コウ」という音は「拘」以外にも「構」「講」「港」など多くの漢字が持つ音ですが、「拘」の「コウ」は制約・束縛・とらわれというニュアンスを帯びた特有の重みを持っています。熟語の中でその意味が際立つ音読みです。
手へんに句「拘」の漢字読み方|訓読み
「拘」の訓読みは「かかわ(る)」「とら(える)」「こだわ(る)」などが主なものです。いずれも「関与する・束縛する・執着する」という意味合いを持つ動詞として使われます。
「かかわる」という読みは「拘わらず(かかわらず)」という形で現代語でも頻繁に使われており、「それにもかかわらず」「年齢に拘わらず」といった表現の中に生きています。「かかわらず」は現代の日常語・ビジネス文書の中で非常によく使われる表現であり、「拘」の訓読みの中で最もなじみ深いものと言えるでしょう。
「拘」の訓読みの使用例をまとめると以下のとおりです。
- かかわ(る)・かかわ(らず)(関与する・関係なく、の意)
- とら(える)(つかまえる・捕縛する、の意)
- こだわ(る)(細かいことにとらわれる・執着する、の意)
- かか(わる)(関わる・束縛されるの意の古語的表現)
「こだわる」という読みは現代語で広く使われており、「細部にこだわる」「品質にこだわる」など、必ずしも否定的な意味ではなく「こだわり・追求」というポジティブな文脈でも使われるようになっています。「拘」という字が持つ「とらわれる」という意味が、現代語の中で多彩なニュアンスに広がっていることがわかります。
手へんに句「拘」の成り立ち(字源)|手へん+句でなぜこの意味になる?
「拘」は、部首である「扌(てへん)」と「句(く・こう)」の組み合わせからなる形声文字です。形声文字とは、意味を表す意符と音を表す音符から構成される漢字であり、「拘」もこの原則に従って作られています。
「扌(てへん)」が意味を担う部分
てへん(扌)は、手・手の動作に関連する意味を持つ意符です。「拘」が「手でつかまえる・とらえる」という行為を表す字であることを示しています。てへんを持つ漢字には「押」「持」「捕」「握」「掴」など、手の動作・行為に関わる字が数多く存在しており、「拘」もその仲間として「手でとらえる・つかむ」という行為を原義とする字であることが字形から自然に読み取れます。
「句」が音を担う部分
「句(く・こう)」は音符として機能しており、「拘」の読み「コウ・ク」を提供しています。「句」はもともと「まがる・かぎ型に曲がる」という意味を持つ字とされており、「かぎ型に曲げてとらえる・引っかける」というイメージが「拘」の「とらえる・束縛する」という意味形成に影響を与えたとも考えられています。形声文字でありながら、音符の持つ意味が合成後の字の意味にも関与しているという点で、字源として非常に興味深い構造を持っています。
つまり「拘」は、「手(扌)でかぎ型に引っかけてとらえる」というイメージから「とらえる・束縛する」を意味する字として成立し、さらに「精神的にとらわれる・こだわる」という抽象的な意味へと発展しました。字の成り立ちを知ることで、「拘」が持つ「物理的・心理的な束縛」という二重の意味の源泉が鮮明に見えてきます。
手へんに句「拘」が使われる苗字と読み方
「拘」を含む苗字は日本では極めて珍しく、一般的な苗字としての使用例はほとんど確認されていません。また「拘」の持つ「束縛・とらえる」という意味から、名前や苗字に積極的に使われる字ではない傾向があります。
「拘」に関連する人名・表現について
「拘」は常用漢字ではあるものの、その意味の性質(束縛・拘束・とらわれ)から、人名・苗字への使用は一般的ではありません。法律用語や日常の動詞表現として広く使われる字である一方、名前に込める意味としてはネガティブなニュアンスを持つため、命名に選ばれることはほとんどないのが実情です。
ただし、歴史上の人物の名や号・雅名の中に「拘」が含まれる例が稀にあり、「物事にとらわれない・こだわらない」という逆説的な意味を込めて使われた場合も存在します。「不拘(ふこう)」という言葉が「こだわらない・自由である」を意味するように、「拘」という字を逆説的に用いることで自由・超脱の精神を表現する用例もあります。
なお「拘」に近い読みや字形を持つ「枸(く)」「佝(く)」などは人名に使われる例があり、「拘」との混同に注意が必要です。「拘」自体の人名使用は現代においてほぼ見られないと理解しておくのがよいでしょう。
手へんに句「拘」を使う熟語・言葉と読み方
「拘」を含む熟語は、法律・司法の専門用語から日常的な表現まで非常に幅広く、現代日本語においても実用的な語彙が豊富に揃っています。「拘」が常用漢字であることから、教育・法律・ビジネス・日常会話のさまざまな場面で活躍しています。
主な熟語一覧
| 熟語 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 拘束 | こうそく | 人の自由を制限し、行動できないようにすること。法的・物理的な束縛。 |
| 拘置 | こうち | 刑事手続き上、被疑者・被告人を施設に収容して身柄を拘束すること。 |
| 拘留 | こうりゅう | 刑事罰のひとつ。1日以上30日未満の期間、刑事施設に留置すること。 |
| 拘禁 | こうきん | 身柄を拘束して施設に閉じ込めること。拘置・拘留の上位概念。 |
| 拘泥 | こうでい | 些細なことにこだわり、とらわれること。「拘泥しない」の形でよく使われる。 |
| 拘引 | こういん | 強制的に人を連行すること。召喚に応じない者を強制的に連れてくる手続き。 |
| 不拘 | ふこう | こだわらないこと。物事にとらわれず自由であること。 |
| 拘わらず | かかわらず | 〜に関係なく・〜であっても。「それにもかかわらず」の形で多用される接続表現。 |
法律用語としての「拘束」「拘置」「拘留」「拘禁」はいずれも刑事手続きに関わる重要な用語です。特に「拘置(こうち)」は「拘置所(こうちしょ)」という施設名でも広く知られており、刑事司法の場面で日常的に目にする言葉です。これらの法律用語を正確に理解することは、市民リテラシーの観点からも重要と言えます。
一方、日常語としての「拘わらず(かかわらず)」は現代のビジネス文書・公式文書・日常会話でも非常によく使われる表現です。「年齢・性別に拘わらず」「結果に拘わらず」のように、条件を問わない・例外なく適用されるというニュアンスを伝える際に欠かせない表現として定着しています。
手へんに句「拘」を含む地名・用語と読み方
「拘」を含む地名は日本国内では一般的ではありませんが、法律・行政・司法に関わる施設名・制度名・専門用語の中に「拘」の字は広く見られます。また中国・インドなどの地名に関連した歴史的・文化的な固有名詞にも「拘」が登場することがあります。
法律・行政における「拘」を含む施設名・制度名
日本の司法・刑事手続きにおいて、「拘」を含む施設名・制度名は現代でも広く使われています。
| 施設名・制度名 | 読み方 | 概要 |
|---|---|---|
| 拘置所 | こうちしょ | 未決拘禁者(刑事裁判中の被告人など)を収容する施設。東京拘置所などが有名。 |
| 拘束令状 | こうそくれいじょう | 人の身柄を拘束するために裁判所が発する令状。逮捕状・勾留状の総称。 |
| 身柄拘束 | みがらこうそく | 逮捕・勾留など、法的手続きに基づいて人の身柄を拘束すること。 |
「拘置所(こうちしょ)」は日本全国に設置されている法務省所管の施設で、刑事裁判が確定するまでの被告人や、死刑確定者などを収容する場所です。東京拘置所・大阪拘置所などが全国的に知られており、「拘」の字が司法・法務の文脈で最もよく目にされる施設名のひとつです。
歴史・文化的な文脈における「拘」
歴史的・文化的な文脈では、仏教発祥の地インドの地名「拘尸那(くしな)」「拘舎羅(こうしゃら)」など、サンスクリット語・パーリ語の音写漢字として「拘」が使われた例が仏典・仏教史料の中に見られます。仏教が中国を経て日本に伝来した際、インドの地名や人名を漢字で音写する際に「拘」が用いられており、仏教文化史の中に「拘」の字の痕跡が残っています。
このように「拘」は、日常の動詞表現から法律専門用語、さらには歴史・宗教の分野まで、幅広い文脈にわたって現代の日本語の中に根づいている、実用的かつ奥深い常用漢字のひとつと言えるでしょう。

