漢文の「其の」とは?意味・読み方・書き下し文の書き方と使い方を例文付きで解説!

漢文を読んでいると、「其の」という表現がたびたび登場します。「其の人」「其の身」など、さまざまな文脈で使われますが、「意味は何?」「書き下し文にするとき漢字のまま?ひらがな?」と迷う人も多いのではないでしょうか。

この記事では、漢文における「其(その)」の意味・読み方・品詞・書き下し文での書き方・例文・他の指示語との違いまで、中高生でもわかるようにわかりやすく解説します。漢文の「其の」をしっかりマスターして、古典読解の力を高めましょう!

漢文の「其の」とは?意味と読み方をわかりやすく解説

漢文の「其」は、「その・それ・そこ」を意味する指示語(指示代名詞・連体詞)です。現代日本語の「その〜」「それ」にほぼ対応する言葉で、前に述べた事柄や人物を指し示すときに使われます。

項目内容
漢字
音読みキ・ギ
訓読みその・それ
品詞指示代名詞/連体詞(「其の〜」の形)
画数8画(部首:八)
漢検級準1級

「其の」(その)は、そ(代名詞)+の(格助詞)」が合わさった形と考えられており、goo国語辞書では「空間的・心理的に聞き手に近い人や物をさす」「現在、話に出ている事柄をさす」などの用法が示されています。漢文では前述の人物・事柄・場所を指して使われることがほとんどです。

「其の」の書き下し文での書き方|漢字のまま?ひらがな?

漢文を学ぶ際にとくに迷いやすいのが「書き下し文にするとき、『其の』は漢字のまま書くのか、ひらがなに直すのか」という点です。結論から言います。

「其の」は原則として漢字のまま「其の」と書き下します。

書き下し文でひらがなに直すのは、次の2つの場合です。

  • 日本語の助詞・助動詞として訓読する漢字(例:「之」を「の」と読む場合、「也」を「なり」と読む場合など)
  • 再読文字の2度目の読み(例:「未」の2度目の読み「ず」など)

「其」は指示代名詞(または連体詞)であり、助詞でも助動詞でもありません。そのため書き下し文では「其の」と漢字で書くのが正しいのです。ただし、実際の入試や教科書では「その」とひらがなで表記されているケースもあり、どちらかを指定されている場合はそれに従いましょう。

書き下し文の基本ルールまとめ

種類書き下し文での書き方
自立語(名詞・動詞・形容詞など)漢字のまま(+送り仮名)学ぶ、人、白し
助詞・助動詞として訓読する漢字ひらがなに直す之(の)、也(なり)
再読文字の2度目ひらがなに直す未(ず)、当(べし)
其(指示代名詞・連体詞)漢字のまま「其の」其の人、其の身

漢文における「其」の用法一覧|其の多様な使い方を整理する

漢文の「其」は、文脈によってさまざまな用法を持ちます。大きく分けると「指示代名詞」「連体詞(連体修飾語)」「副詞的用法」の3つがあります。

①「其の〜」(連体修飾語)

最も一般的な用法で、後ろの名詞を「その〜」と修飾します。

  • 例:其の人(その人) 其の身(その身・自分自身) 其の志(その志)

②「其れ」(指示代名詞)

「それ」として単独で使われ、前述の事柄や物を指します。

  • 例:其れを知る者は其れを好む者に如かず。(それを知る者はそれを好む者には及ばない)

③副詞的用法(「きっと・おそらく」)

文意によっては推量・強調の副詞として「きっと〜だろう」「〜ではないか」という意味を表すこともあります。この用法は上級者向けですが、文脈に注意して読む必要があります。

其の〜」の形が最頻出であり、まずはこの用法をしっかり押さえておくことが漢文読解の基本です。(参考:書くための漢文研究「指示代詞の使い方」)

「其の」を含む漢文の例文と書き出し文|その読み方・訳し方

実際の例文で「其の」の使われ方を確認しましょう。

例文1:論語より

【漢文】其の身正しからざれば、令すと雖も従はず。

【書き下し文】其の身正しからざれば、令すと雖も従はず。

【現代語訳】自分自身の行いが正しくなければ、命令を出しても人はそれに従わない。

→「其の身」=「その身(自分自身)」。自分が正しい行動をしてこそ人を動かせる、という孔子の教えを示した名言です。

例文2:Wikibooksの例より

【漢文】其の人応ふる能はざるなり。

【書き下し文】其の人応ふる能はざるなり。

【現代語訳】その人は答えることができなかった。

→「其の人」=「その人」。前の文脈で言及した人物を指しています。

例文3:一般的な漢文表現

【漢文】知其の善を知りて其の悪を知らず。

【書き下し文】其の善を知りて其の悪を知らず。

【現代語訳】その(人の)良い点は知っているが、悪い点は知らない。

「其の」は1つの文章の中で複数回登場することも多く、そのたびに「前述の何を指しているか」を文脈から正確に読み取ることが漢文読解の鍵となります。

「其」と混同しやすい指示語との違い|此・之・彼と其の使い分け

漢文には「其」以外にも指示語として機能する文字が複数あります。混同しやすいものをまとめて整理しておきましょう。

漢字訓読み意味・ニュアンス用例
これ・この・ここ話し手に近いもの・今目の前のもの此の人(この人)
それ・その・そこ前述のもの・聞き手に近いもの其の人(その人)
かれ・あれ・あの話し手・聞き手から遠いもの彼の人(あの人)
これ・の・ゆく指示代名詞・助詞・動詞として多用之を知る(これを知る)
これ・この「此」と近い・「〜は」の主語にも是れ正しからず

「此(これ・この)」と「其(それ・その)」はセットで覚えると整理しやすく、「此」が話し手側・目の前のもの、「其」が前述のもの・聞き手側のものという対比関係があります。

また「之」は非常に多機能な文字で、助詞「の」・指示代名詞「これ」・動詞「ゆく」のいずれかとして文脈に応じて読み分ける必要があります。同じ漢字でも品詞が変われば書き下し方も変わるため、返り点・送り仮名・文脈の三点セットで判断することが大切です。

漢文を学ぶ意味|「其の」ひとつの言葉から広がる古典の世界

「其の」という指示語ひとつを丁寧に学ぶことで、漢文のルール・古代中国語の構造・書き下し文の作り方まで、多くのことが見えてきます。

漢文は現代の私たちから遠い存在のように思えますが、実は日本語のなかに今も生き続けています。「其の」が変化した「その」は現代語として日常的に使われていますし、論語の「其の身正しからざれば、令すと雖も従はず」という言葉は、現代のリーダーシップ論にも通じる普遍的な真実を語っています。

古典を学ぶことは、過去の人々が残した知恵や言葉に耳を傾けることです。時代を超えて伝わる言葉には、時代を超えて人々が共有してきた価値観や感情が宿っています。「其の」という小さな言葉を入り口に、2000年以上前の人々と言葉でつながる——漢文にはそんな豊かな面白さがありますね。