「英単語をおぼえる」「あの日の感動をおぼえている」——同じ「おぼえる」でも、漢字で書くと「覚える」と「憶える」の2種類があります。なんとなく「覚える」だけ使っていたという方も多いと思いますが、実は使い分けには明確なルールがあります。
この記事では、「覚える」と「憶える」の意味の違いから、漢字の成り立ちを使った覚え方、常用漢字としての扱い、ビジネスでの使い方、よくある疑問まで、わかりやすく解説します!使い分けを知ると、文章のニュアンスがぐっと豊かになります。
もくじ
「覚える」と「憶える」の違いをひと言で——同じ読みでも意味は別物
「覚える」の意味は、「記憶にとどめる」「学んで身につける」「ある感情や感覚を感じる」の3つです。「憶える」は、「記憶にとどめる」という意味のみで使用できます。
| 漢字 | 読み | 意味の範囲 | ひと言 |
|---|---|---|---|
| 覚える | おぼえる | 記憶する・習得する・感じる(3つ) | 幅広い「おぼえる」全般 |
| 憶える | おぼえる | 記憶する(1つのみ) | 心に深く刻む記憶 |
「覚える」は3つの意味を持つ広い言葉、「憶える」は「記憶する」という意味だけに絞られた言葉です。どちらを使っても「記憶する」という場面では意味は通じますが、「感じる」「習得する」の意味で使う場合は「覚える」しか使えません。
「覚える」の意味と使い方——覚えるが持つ3つの意味と例文
「覚える」には「記憶する」、「習得する」、「感じ取る」といった複数の意味が含まれています。さらに、少し古風な用法として、「思われる」という意味でも使用されることがあります。
①記憶する
情報・知識を頭に入れて忘れないようにすること。
- 英単語を100個覚えた。
- 友達の電話番号を覚えている。
- 道順をしっかり覚えておこう。
②習得する・身につける
技術・スキル・やり方を学んで自分のものにすること。
- 料理の基本を覚えた。
- 仕事の手順を覚えるまで時間がかかった。
- ギターのコードを覚えて弾けるようになった。
③感じる・感じ取る
何らかの感情・感覚を感じること。
- 彼の言葉に違和感を覚えた。
- 初めての舞台で緊張を覚えた。
- その行動に疑問を覚えた。
「感じる」という意味での「おぼえる」には必ず「覚える」を使います。「憶える」では代替できません。この点が最大の使い分けポイントです。
「憶える」の意味と使い方——憶えるは「心に刻む」ときだけ使う
「憶える」は心に留めて記憶すること、過去のことを思い出すという意味を持ちます。
「憶える」は感情や経験を心に刻むことです。 単に頭で情報を記憶するというよりも、感情・体験・印象が深く心に刻まれるような記憶を表現したいときに使うと効果的です。
「憶える」の例文
- あの夏の記憶を今も鮮明に憶えている。
- 初めて会ったときのことを憶えていますか。
- 子どものころ遊んだ公園のことを今でも憶えている。
- 祖父が語ってくれた戦時中の話を憶えている。
「憶える」という形で書くと、感情の深さや記憶の質を表現する際に適している場合があります。
文学作品・エッセイ・詩など、感情や情景を丁寧に描写したい文章では「憶える」を使うと、ひと味深い表現になります。
覚える・憶えるの使い分けを一発で覚える方法——漢字の成り立ちがヒント
2つの「おぼえる」を使い分けるには、それぞれの漢字に含まれる部首・要素に注目するのが効果的です。
「覚」の成り立ち
「覚」は「臼(うす)+冖(べき)+見(みる)」で構成されています。「見る・気づく・目覚める」というイメージが強く、客観的に認識して頭に入れるという「広い記憶」を表します。
「憶」の成り立ち
「憶」は「りっしんべん(心)+意(い)」で構成されています。「心(りっしんべん)」が入っているのが最大のポイントで、「心に刻む・心の中にある」というイメージです。感情・体験・印象が心の奥に刻まれる深い記憶を表します。
まとめると「りっしんべん(心)が入っているのが憶える=心に刻む深い記憶、入っていないのが覚える=幅広い記憶全般」と覚えるのが最もシンプルで忘れにくい覚え方です。
「覚える」と「憶える」の例文比較——同じ文でどう変わる?
同じ「おぼえる」を使った文でも、漢字が変わるとニュアンスが変化します。比較してみましょう。
| 文 | 「覚える」 | 「憶える」 |
|---|---|---|
| あの日のことを〇〇ている | 記憶している(一般的な表現) | 心に深く刻まれている(情緒的な表現) |
| 彼女の名前を〇〇ている | 頭で記憶している(自然) | 心に刻んでいる(やや詩的) |
| 仕事のやり方を〇〇た | 習得した(正しい) | ❌ この意味では使えない |
| 違和感を〇〇た | 感じた(正しい) | ❌ この意味では使えない |
「憶える」は「記憶する」の意味でのみ使え、かつ心に深く刻まれるような情緒的な記憶に使うと文章が豊かになります。一方「覚える」は3つの意味すべてをカバーできる万能な言葉です。
「憶える」は常用漢字外——ビジネス・公式文書ではどちらを使うべきか
常用漢字としては、「覚える」だけとなっています。
「憶」は常用漢字表に含まれていないため、新聞・教科書・公文書・ビジネス文書などでは「憶える」ではなく「覚える」に統一して使うのが基本です。
| 場面 | 推奨する表記 | 理由 |
|---|---|---|
| ビジネスメール・報告書 | 覚える | 常用漢字に統一するのが原則 |
| 学校のテスト・論文 | 覚える | 常用漢字外の使用は避けるのが無難 |
| 小説・エッセイ・詩 | 憶える(使用可) | 文学的表現として情緒を加えられる |
| SNS・日常的な文章 | どちらでも可 | ニュアンスで使い分けると効果的 |
迷ったときは「覚える」を使えば常に正しく、どの場面でも通用します。「憶える」はニュアンスを意識したいとき・文学的な文章を書くときの「プラスアルファ」の選択肢として覚えておきましょう。
「覚える」「憶える」に関するよくある疑問——迷ったときのQ&Aまとめ
Q. 「昨日のことを覚えている」と「昨日のことを憶えている」はどちらが正しい?
A. どちらも正しい日本語です。ただし、日常的な会話なら「覚えている」が自然で、昨日の体験が心に深く刻まれているというニュアンスを出したいなら「憶えている」がより豊かな表現になります。
Q. 「名前を憶える」は間違い?
A. 間違いではありません。ただし「名前をただ記憶する」という意味なら「覚える」が一般的で、「その人の名前が心に深く刻まれた」というニュアンスを込めるなら「憶える」が効果的です。
Q. 「覚える」と「憶える」以外に「おぼえる」と読む漢字はある?
A. 「覺える」は「覚える」と同じ意味ですが、「覺」が「覚」の旧字体であるため使用頻度は低いです。 現代の日常語では「覚える」か「憶える」の2択で考えておけば問題ありません。
Q. 子どもや中学生が使うなら「覚える」だけで十分?
A. 十分です。「覚える」は常用漢字で意味も広く、あらゆる場面で使えます。「憶える」は「知っていると文章に深みが出る」レベルの知識として押さえておけばOKです。

