「ユースケース」の意味とは?システム開発で必須の概念をわかりやすく解説!

「ユースケースって何ですか?」と聞かれたとき、自信を持って答えられますか?

IT・システム開発の現場では頻繁に使われる言葉ですが、「なんとなく知っている」「説明できない」という方は意外と多いです。

この記事では、ユースケースの基本的な意味・語源・歴史から、ユースケース図の構成要素・書き方・具体例・メリットと注意点、そして似た概念との違いまで、わかりやすく解説します。読み終えれば「ユースケース」をスラスラ説明できるようになります!

ユースケースとは何か?——「誰が・何のためにシステムを使うか」を表す概念

ユースケースとは、情報システムやソフトウェアの設計や振る舞いの分析などで用いられる概念の一つ。利用者などの主体(「アクター」と呼ばれる)がシステムを用いて何かの機能を利用したり目的を達成しようとする際に、特定の状態からスタートしてどのような操作や応答が行われるべきかを記述する。

もっとシンプルに言うと、誰が・どんな目的で・このシステムをどう使うか」を一つひとつ整理したものがユースケースです。

たとえば、銀行のATMシステムを設計するとき「お客さんが残高を確認する」「お客さんが現金を引き出す」「銀行員が不正取引を確認する」など、さまざまな利用シーンがあります。これらの利用シーンの一つひとつが「ユースケース(use case=使い方の事例)」です。設計者はこれらをあらかじめ整理することで、システムに必要な機能を漏れなく洗い出せます。

ユースケースの語源と歴史——1986年に生まれた設計手法がなぜ今も使われるのか

1986年、後に統一モデリング言語(UML)やラショナル統一プロセス (RUP) で重要な役割を演じたイヴァー・ヤコブソンは、初めてユースケースの視覚化モデリング技法を成文化した。当初彼は usage scenarios とか usage case という用語を使用していたが、それらが英語として不自然であると気づき use case という用語を使うようになった。

1990年代、ユースケースは機能要求を含む振舞を把握する手法として使われるようになってきた。 その後UMLの標準仕様に組み込まれ、世界中の開発現場で使われる共通手法として定着しました。

ユースケースが40年近く使われ続けている最大の理由は「技術者でない人にも直感的にわかりやすい」という点です。棒人間と楕円という極めてシンプルな図で、システムの全体像を誰にでも伝えられます。

ユースケース図とは——棒人間と楕円だけで表現できる最もシンプルなUML図

UMLにはクラス図・シーケンス図・アクティビティ図などさまざまな種類がありますが、なかでもユースケース図は構成が比較的シンプルで、システムの利用者と機能の関係を直感的に把握できるという特徴があります。そのため、初学者や非エンジニアでも理解しやすく、開発の初期段階で関係者間の認識をそろえる手段としてよく用いられます。 (参照:agest.co.jp)

UML は、作図に使用できるモデリングツールキットです。ユースケースは、ラベル付きの楕円形で示されます。棒人間はプロセス内のアクターを示し、システムにおけるそのアクターの参加はアクターとユースケース間の線でモデル化されます。システムの境界を描写するには、ユースケースの周囲にボックスを描画します。

ユースケース図を使うと「このシステムで・誰が・何をできるのか」が一枚の図で一目瞭然になります。エンジニア向けの詳細な設計書ではなく、クライアントや非エンジニアに向けた「システムの説明資料」としての側面が特に強い図です。

ユースケース図の構成要素——アクター・ユースケース・サブジェクトの役割

ユースケース図の作成には、以下の5つの要素を明確化することが必要となります。 代表的な3つの構成要素を解説します。

構成要素図での表現意味
アクター(Actor)棒人間のアイコンシステムを利用する人・外部システム
ユースケース(Use Case)楕円形+ラベルアクターがシステムで行う操作・機能
サブジェクト(Subject)四角い枠(ボックス)システムの境界線・対象範囲

4種類の関係線

  • 関連(Association):アクターとユースケースをつなぐ実線。「この人はこの機能を使う」を示す。
  • 包含(Include):あるユースケースが必ず別のユースケースを呼び出すことを示す点線矢印。
  • 拡張(Extend):条件によって追加される処理を示す点線矢印。
  • 汎化(Generalization):アクター間・ユースケース間の「上位・下位」関係を示す実線矢印。

ユースケース図の具体例——ECサイトと銀行システムで実際に書いてみると

実際のシステムでどのようなユースケースが書かれるかを確認しましょう。

例①:ECサイトのユースケース

アクターは「一般ユーザー」「管理者」の2種類。

  • 一般ユーザー:商品を検索する/商品を購入する/レビューを投稿する/注文履歴を確認する
  • 管理者:商品を登録する/在庫を管理する/ユーザーを管理する

例②:銀行ATMシステムのユースケース

顧客は「残高照会」「入出金」「振込」などの操作を行い、銀行職員は「口座開設」「顧客情報の管理」「不正取引の確認」などを行います。これらの操作(ユースケース)と関係する人(アクター)との関係を図で表すことで、システム全体の機能や利用者の役割を理解しやすくなります。

ユースケース図を書くと「このシステムでは何ができて・誰が使って・何のためにあるのか」が一枚の図でクリアになります。開発前に関係者全員でこの図を確認することで、認識のズレを大幅に減らせます。

ユースケースを使うメリットと注意点——要件定義で認識のズレを防ぐ最強ツール

「開発者目線ではなく、ユーザー目線の視点を得られる」「作成するシステムに対する、イメージの明確化ができる」「できること・できないことの明確化ができる」「クライアントの認識の共有ができる」がユースケース図を使用するメリットです。

主なメリット

  • 非エンジニアでも理解できる:初学者や非エンジニアでも理解しやすく、開発の初期段階で関係者間の認識をそろえる手段としてよく用いられます。
  • 機能の漏れ・重複を防げる:システムが提供すべき機能を定義し、それらを整理して明確化します。これにより、機能の重複や漏れを防ぐことができます。
  • テストケースの作成に使える:テストケースの一部(システムテスト、受け入れテスト、機能テスト)はユースケースから直接作成可能である。

注意点

  • 詳細な処理フローは表現できない:ユースケース図はあくまで「概要」を示す図です。詳細なステップの順序はシーケンス図などで補完が必要です。
  • 機能以外の要求は表現できない:ユースケースはシステムに関する機能以外の要求を把握するのには向いていない。 パフォーマンス・セキュリティ要件など非機能要件は別途記述が必要です。

「ユースケース」と「シナリオ」「要件定義」「フローチャート」との違い

似た概念との違いを整理しておくと、ユースケースへの理解が深まります。

概念何を表すかユースケースとの違い
ユースケース誰がシステムを何のために使うか(利用の目的・機能)―(基準)
シナリオ特定の状況下での具体的な操作の流れユースケースの中の「具体的な一例」がシナリオ
要件定義システムに必要な機能・性能の全体仕様ユースケースは要件定義の「インプット」になる
フローチャート処理の順序・条件分岐の流れユースケースより詳細な「処理の手順」を表す

ユースケースは「何ができるか(機能)」の整理
フローチャートは「どう動くか(処理)」の整理
要件定義は「何を作るべきか(仕様)」の整理

——と段階が異なります。開発プロジェクトではこれらを組み合わせて使うのが一般的です。

ユースケースはシステム開発の最上流工程で使われる概念ですが、本質は「利用者の視点でシステムを考える」というシンプルな考え方です。ITエンジニアだけでなく、プロジェクトマネージャー・ビジネスアナリスト・事業企画担当者など、システム開発に関わるあらゆる人が押さえておくべき重要な概念です。