「おかす」という言葉には「冒す」「犯す」「侵す」という三つの漢字があり、それぞれ意味と用法が異なります。日本語の同音異義語のなかでも、この三つは混同されやすく、誤用も多く見られます。
文章で正しく使い分けられると、語彙力と表現の正確さが大きく上がります。本記事では三つの「おかす」の意味・例文・使い分けのコツをわかりやすく解説します!
もくじ
「おかす」を漢字で書くと?冒す・犯す・侵すの基本の違い
まず三つの違いを端的にまとめます。
- 冒す(おかす):危険・困難・禁を無視して進む。リスクを取る行為。
- 犯す(おかす):法律・道徳・規則に反する行為をする。罪を犯す。
- 侵す(おかす):他者の領域・権利・身体などに不法に入り込む。侵害する。
字の構造にもヒントがあります。「冒」は「冂(覆い)+目」で「目を覆って突き進む」イメージ、「犯」は「犬(獣)+巳(蛇)」で凶暴・罪のイメージ、「侵」は「人+ほうき」で外から踏み込むイメージです。
「冒す」の意味と使い方:リスクや危険を冒す場面
「冒す」は、危険・困難・禁忌を承知のうえで、あえて行動することを表します。マイナスの状況に向かって意志的に踏み出すニュアンスが強く、勇気や無謀さを含む場面で使われます。
例文
- 命の危険を冒して救助活動を続けた。
- 禁を冒して立入禁止区域に入った。
- リスクを冒すことで大きな成果を得た。
「危険を冒す」「禁を冒す」「冒険」などの言葉に使われる「冒」は、「わかっていてもあえて突き進む」という意志的な行動を意味します。病気が「全身を冒す」のように、悪影響が広がる意味でも使われます。
「犯す」の意味と使い方:法律・道徳に違反する場面
「犯す」は、法律・社会規範・道徳・ルールに違反する行為を指します。「罪を犯す」「過ちを犯す」のように、何らかの基準・禁止事項に反することを示します。
例文
- 重大な罪を犯してしまった。
- 同じ過ちを二度と犯すまい。
- 法律に違反する行為を犯したとして逮捕された。
「犯罪」「犯人」「犯行」など、法的・道徳的な違反を表す熟語の多くにこの字が使われています。「ルール・基準を破る」という点が「犯す」の核心であり、意図的かどうかに関わらず使われます。
「侵す」の意味と使い方:領域・権利を侵害する場面
「侵す」は、他者の領域・権利・自由・身体などに外部から不法に踏み込むことを表します。「侵入」「侵略」「侵害」など、外部からの越境・押し込みのイメージが基本です。
例文
- 他国の領土を侵すことは許されない。
- プライバシーを侵す行為は厳に慎むべきだ。
- 病原菌が体内を侵した。
「侵す」のポイントは、「外から境界を越えて踏み込む」という方向性にあります。権利・領域・身体といった「守られるべきもの」への不法侵入を示す場面で使われます。
冒す・犯す・侵すの違いが曖昧になりやすい例文を検証
実際の文章では迷いやすいケースがあります。代表例を見てみましょう。
「禁を○す」
禁忌・禁止事項をあえて破って踏み込む場合は「禁を冒す」が正解です。禁止されていると知りながらあえて進む意志的な行動のため「冒」を使います。
「プライバシーを○す」
他者の権利・領域への侵入なので「プライバシーを侵す」が正解。これを「犯す」と書いても意味は通じますが、より正確には「侵す」です。
「罪を○す」
法律・道徳への違反なので「罪を犯す」が正解。「冒す」や「侵す」は使いません。
「何を対象にして、何をしているか」を意識すると、使い分けの判断が容易になります。
冒す・犯す・侵すを正しく使い分けるための覚え方
三つの「おかす」の覚え方として、以下のフレーズが役立ちます。
- 冒す=危険・禁に向かって踏み出す(冒険のイメージ)
- 犯す=ルール・法律に背く(犯罪のイメージ)
- 侵す=他者の領域・権利に踏み込む(侵略のイメージ)
それぞれの漢字を使った熟語(冒険/犯罪/侵略)を思い浮かべると、どの文脈で使うべきかが自然とわかるようになります。
日本語の同音異義語の使い分けは、意味の核にある「方向性・対象・行為の性質」を掴むことが最大のポイントです。三つの「おかす」もそれぞれの漢字が持つ固有のイメージを意識することで、自然と正しく使えるようになるでしょう。

